第40話 反省言葉を聞いて喜んだのも束の間・・・
大雪が降った翌日、車を出すために嫌というほど雪掻きをしなければならず、もうそれだけで疲れてしまった真奈は、オフィオスに電話を入れて、
「今日は一日お休みをください」
と頼んだのだが、大事な仕事があるのでどうしても来て欲しいとは上司の言葉。
仕方なく、車を走らせて高速に乗った途端、大型トラックが氷の塊に乗ってしまってスリップして来た。真奈の小さな日本車が走っていた車線に構わず突入して来るではないか!
「えー、嘘でしょう?」と慌てて次の車線に逃げる。トラックはまた次の車線にも滑ったまま入り込んで来た。
ついに一番最後の車線まで逃げ込んだところ、そこにも氷が張っていて、今度は真奈の車がスピンした。
クルクルと回転していた車の中で、向かってくる車の群を見た彼女は、
「あー、もうこれが私の人生の終わりか!」
と思った。
それは妙に静かで平和な数秒だった。
次の瞬間、ガーンという音と共に、真奈は自分の車が大型トラックに突っ込んで行くのを、まるで映画の1シーンをスローモーションで見ているように目撃していた。
3車線超えていくうちにスピードは落ちていたため、怪我はせずに済んだことが不幸中の幸いだった。
でも、車からはタラタラと液体が流れ落ち、運転不能になっていた。
このように、毎回車はめちゃくちゃとなったが、体には何も異常も感じなかったため、一度も病院に行かなかったのは間違いだった。なぜなら、後に網膜剥離が起きて、失明の危機に面したのも、これら何度もあった頭への衝突が原因していたかもしれないからだ。
トラックの運転手は、その時、交換学生プログラムのオリエンテーションで、アメリカではあまり聞くことがないと言われていた「アイム・ソーリー」を何度も口にした。
「うわー、反省文化のない国で育った人がこんなに素直にアイムソーリを言うなんで、なんと素晴らしい!」
これは立派だと感心していたのも束の間、トラックの運転手は事故後2、3週間経った頃に、「アクシデント・レポート」で電話番号を見つけたのか、突然真奈に電話を入れてきた。
きっと仕事を失って、相当の罰金も払わされたのだろう。酒に泥酔いした口調で、事故当日の発言とは裏腹に、
「あの事故は・・・お前のせいだぞ!」と電話口で怒鳴り始めた。
その頃の真奈は離婚をした後で、娘も大学の寮に入っており、全くの一人暮らしをしていたので、あのトラックの運転手が恨みを持って家に侵入して来たらどうしようと気が気ではなかった。
To be continued...
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