第39話 アメ車を買うか日本車を買うか?
車がないとどこへも行けないデトロイトで、急に通訳の仕事であちこちと運転していかなければならない毎日が続いた。真奈も新しく車を購入しなければならなかった。まずは地元を助けようとアメ車を買ったが、新車だったにもかかわらず、なんと信号で止まるとエンジンまで一緒に止まってしまうではないか!
それでディーラーの修理に持っていくと、修理工は、
「問題ありません。前輪車ではよくあることです」と笑って、少しも悪びれない。
ところが、同じことが2回3回と続いて、最後にはまさか真奈の車が突然道路上でエンストするとは予期しなかった後ろのバスがもう少しで衝突してきそうになったため、その車を返却して日本車に買い換えた。
確かに日本車の性能は良かった。雪の寒い日で隣人の車がスタートしなかった時も、真奈の日本車だけはスムースに問題なくスタートした。危険な場所も運転しなければならなかったので、故障を心配することがない車は頼りになる。
問題は、運転に慣れた頃にやって来た。それも車ではなく、他のドライバーが問題だった。誰もが運転しなければならない国だけに、運転が上手な人もいれば、下手くそな人もいて、それらの両方が運転をしているから恐ろしい。
ある晩、真奈は夜遅くまでオフィスにいて、もうくたくたになっていた。外は深々と降る雪だった。いきなり隣の車がバーンと彼女の車の右サイドに突っ込んで来た。
「なんじゃ、こりゃ?」と車を止めてぶつかってきた人とご対面。
まだ免許取り立てで、雪が降る中、初めての車をピックアップして恐る恐る運転していたティーンの女の子だった。
「なぜ、私の車のサイドにぶち込んできたの?」と聞くと、
「車の窓が雪で覆われていてよく見えなかったの」と言う。
「よく見えなかったのならどうして車線を変えようとしたの?」
「助手席にいたボーイフレンドが『ゴー!』って言ったから、周りに車がないことを祈りつつ車線を変えようとしたのよ」
これが1回目。
2回目は、真奈が左折するレーンで自分の番を待っていた時だった。つまり、彼女の車は動いてもいなかったのだ。そこへいきなり背後からバーンと車が突っ込んできたから堪らない。真奈の車のトランクはめちゃめちゃになった。
ぶつかって来た女性はそれを太陽のせいにした。
「太陽があなたの車を完全にカバーしていて、あなたの車は全く見えなくなっていたのですよ。」
幸い、近くにいたパトカーがすぐにやって来て二人の免許書を要求した。なんと驚いたことに、彼女は、
「免許書は持っていません」と答えたのだった。何回も事故を起こしていて、免許証差し押さえをされていたようだった。
3回目、夕方のラッシュアワーで高速の車は皆止まっていた。そこへいきなり、玉突きのように真奈の後ろの車に誰かが追突して、押された後ろの車が今度は真奈の車に追突。車から出た彼女は、2台の車に突っ込んで来た運転手に聞いた。
「一体どうしたというのですか?」
「実は、考え事をしていて、あなた方の車が動いていないことに気が付かなかったのです。」見ると、彼の目には涙が一杯浮かんでいるではないか!
「冗談でしょ?」
でも、真奈はなんだかその人が可哀想になってそれ以上質問できなかった。すると、今度は涙の彼の方から質問が出た。
「妻に電話したいから、あなたの携帯を借りてもいいですか?」
まだ、携帯電話を持っている人が少ない時代だった。真奈は仕事用の大きな携帯電話を持っていたから、衝突に関係した人たちの皆が電話を借りたがった。それで、真奈美は皆の会話が終了するのを待たなければならなくなった。
そうこうしているうちに、真奈の携帯に外から電話が入った。娘からだった。
「ママ、何をしているの?お腹空いたよ。私のテイクアウトの中華料理はどこ?」
4回目は、停止サインで右左を確認していた真奈の車にいきなりバーンと、またしても背後から誰かが突入して来た。その運転手はポリスに言った。
「ハイドロ・プレーニング現象があったのです。(雨などで水が溜まった路面で車が滑ってブレーキが効かなくなること)」でも、そこには全く水が見られなかった。
「もう、みんなちょっとちゃんと運転してくれる?」
と言いたい真奈だった。
To be continued...
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