第38話 インタビュー前は早いテンポの英語ニュースを聞こう!

 当然の事ながら、アメリカの会社でのインタビューは英語でなされる。真奈は普段仕事をしていない時は、日本語でも英語でもゆっくり話をする方が好きなタイプだ。


 しかし、通訳になるインタビューでは、あまりゆっくりと話していると、英語のセンテンスを考えるのに時間がかかっていると思われてしまう。通訳として採用されるわけがない。通訳は二人分一度に速く話せるスピードを要求されるからだ。


 だから、真奈はいつもインタビューの場まで運転して行く車の中ではアメリカのラジオのニュース番組を聴きながら行くことにしていた。


ニュース番組は普通の話し方よりスピードがずっと速いからだ。


 速いスピードに慣れたところでインタビューに入ると、ニュースキャスターの速い話し方が乗り移ったようにスムースに英語が速く話せるのだ。


 半分ニュースキャスターになった気分でいるから、自分でも驚くほど英語がスラスラと出てくる。


 彼女をインタビューをしたアメリカ人が言った。


「日本人でこんなに英語を速く話せる人には初めて出会いました。いつからこの仕事を始められますか?」


真奈は、ニュースキャスターの話し方が功を成したとニンマリしたものだった。


 そのように、通訳はスムースに話して行けることが重要だが、言うまでもなく、内容が正確でないと失格である。そのせいか、予算に余裕のある会社は、メイン・インタープリターとその通訳の仕事を点検するチェックインタープリターの二人を用意するところもある。メイン・インタープリターの通訳に問題があると、チェックの人がストップをかけて手を挙げるのだ。


 真奈もメインになったりチェックになったりと両方を経験した。ある日メインとして仕事場に行ったところ、チェックとして紹介された人物がな・な・なんと彼女のビジネスの競争相手で普段から彼女を敵のように見ていた女性だった。


 思った通り、彼女は10分毎ぐらいにストップをかけてきた。

「メイン・インタープリターはあの単語を使ったけれど、この場合はこの単語の方が適切であると思います」という発言ばかりで、当の客まで頻繁なストップにイライラしてきた。


 10人が通訳すれば10種類の表現があるほど言葉とは繊細な生き物である。


 だから、真奈自身がチェック側に回るときは、いつも意味自体が正確に伝わっている限り、自分が使うであろうセンテンスとの多少の違いは見逃すようにしていた。


 しかし、残念なことに、何しろこのチエック・インタープリターは商売敵だったから、そうはしてくれなかった。


 ついに通訳の手配をした米人がその状態に我慢できなくなって、

「これは言語学の授業ではありません。いい加減にして前に進めてくれませんか?」と言って、さすが真奈の商売敵もこの時とばかりの攻撃を諦めた・・・と、これは今思い出しても腹の立つような出来事だった。


To be continued...


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