第18話 日米の常識を押し付け合う日米戦争? 

 今や世界が協力して物づくりをする時代となった感があるが、時に激しい論争に発展することもある。どんなことが引き金となるのだろうか?


 真奈はアメリカのあるマシーン製造業者まで出向いて行った。この時も日本側の社長がまず真奈に囁いた。


「こいつらは、もう自分勝手の礼儀知らずで、本当に頭に来ているんですよ」

「何がそんなに自分勝手なんでしょうかね?」と尋ねた真奈。


「実はね、この会社はうちの会社とパートナーになったんですよ。ところが、この会社はカナダの会社ともパートナーになったにも拘わらず、こっちには何もそのことを知らせて来なかったんですよ。業界の新聞を見て初めて知って驚いたと、そんな調子なんです。全く失礼ですよ。このことをあいつらに言ってやってください」


 その通りアメリカサイドに通訳すると、今度はアメリカサイドの言い分。


「カナダの会社の作っているマシーンは全く違ったタイプのものなので、わざわざ言う必要はないと思ったのです」


「タイプが同じとか違うとか言うことは問題外ですよ。我々はビジネス・パートナーなんですよ。日本でのパートナーはそういうこともちゃんと連絡してお互いの了解を取るのが常識なんですよ」


「我々はアメリカでアメリカのカスタマーを相手にビジネスをやっているのですから、アメリカのやり方をするのが当たり前です。そこへなぜ日本の常識が入ってくるのですか?我々は日本人ではないのです」


「そこが驕っていると言うんだよ。日本人とパートナーになる限りは、日本の習慣にも敬意を表するぐらいのことをしたらどうなんだ?我々の方はちゃんとアメリカのやり方も調べた上でパートナーとなっているんだよ。ところが、こいつらはもうミー、ミー、ミーで自分たちの主張ばかりをして、相手のやり方を尊重するなんて気持ちはこれっぽっちも頭にないんだから、どうしようもないよ」と、特に、日本サイドの方がより一層腹を立てている感じだった。


 そのうちにアメリカサイドの感情も高まってきて、イライラしたアメリカ人たちまでも、真奈の方を見て、

「マナ、君はアメリカ生活も長いのだろう。少しは我々の言っていることがわかるだろう。」 と通訳に食ってかかって来た。


 そして、最初から興奮気味だった日本サイドも、

「真奈さん、あなたも日本人なら我々の言わんとしていることがわかるでしょう」

 と、両方が通訳である真奈の袖を引っ張るような形になってきた。


 そこで、堪り兼ねた通訳。

「ジェントルマンの皆さん、ここまで感情的になっては冷静な判断もできません。それぞれお宅とホテルに戻って頭を冷やして、また明日ミーティングを続けましょう」 と提案した。


 ニュートラルな立場にある通訳は、このようになだめ役までしなければならないのだろうか? 


 もっとひどいケースでは、ある日本人とアメリカ人を同じ席につかすことは危険であると、その二人を抜かしての会議を行ったこともあった。そこにいた人の話では、もう取っ組み合いの喧嘩でも始めそうなほど二人の意見の違いは白熱していたそうだ。


To be continued...

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