第4話

車が運転できないとどこにも行けない


 アメリカの都市のほとんどはニューヨークのマンハッタン以外、公共交通機関が皆無に近い。


 真奈はデトロイトに到着してからそのことに気が付いた。


つまり、アメリカでは車が運転できないとどこへも行けないという、この当たり前の事実を真奈はその時初めて身に染みて悟ったのだった。


 大通りにあったバスを使ってみたが、見知らぬ乗客にいきなり手を掴まれたりして安全な方法ではなかった。


 運転をしないではいられない状況に陥った真奈は、墓地へ行って車の運転の練習を始めた。


スローなスピードで運転しても誰も文句を言わない上に、万が一ミスをしても、誰もが死んでしまっているお墓なら、人を轢き殺してしまう心配がないと思ったからだった。


 車を運転する限りは、一人一人が自動車保険に入っていなければ、万が一事故に遭って大怪我は逃れられたとしてもかかる費用は膨大だと知った。


「アメリカでは男女平等だから、収入の半分は奥さんの責任なんだよ」

とは、夫となったアメリカ人の言葉だった。


 そこで、そういった保険料などを払う必要性に迫られて、結婚式の翌日から真奈もすぐに仕事を始めなければならなかった。


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