第3話 法律が変わって強制送還となる
マイケルと結婚することが決まった時、真奈はまだ日本にいたため、東京のアメリカ大使館に電話してフィアンセビザを申し込もうとした。
大使館の人は、観光ビザでアメリカに入国しても、デトロイトにおいてファンセビザに書き換えることができるからその方が楽だと教えてくれた。
ところが、デトロイトの移民局に行ってみると、真奈がその情報を得た時点からしばらくしてアメリカの移民法が変わり、フィアンセビザが必要な場合、一旦日本に帰って、日本でフィアンセビザを取らなくてはならないように変わったと言われた。
なんというショック!
真奈はデトロイトの移民局で悔し泣きをしたが、移民局の事務員は頑固として譲らなかった。わざわざサンフランシスコで仕事をすることでうまく飛行機代を浮かして入国ができたと喜んでいたのに、一度帰国した後は、今度こそ飛行機代も自腹を切って出さなくてはならない。
しかし、この悔しい経験は、最終的には色々な意味で良い結果を生み出すこととなった。
なぜなら、国際結婚のような大それたことを決めるのには、二人はまだまだ若過ぎると主張していた父には、ただ仕事でアメリカに行くだけだと伝えてあったのだ。
父と駆け落ちして結婚した情熱的な母の提案で、波風を立てずにスムースに事を運ぶことが目的だった。母は心強い味方だった。
アメリカへ行っても、仕事が終わったらすぐ帰国するという建前のもと、その後は母がうまく父に説明するから心配するなと言ってくれていた。
そんなお膳立てがあったため、国を出て移民するというのに、家族の見送りなどなかった。特に父親は、真奈がすぐに帰国するとばかり思っていたのだから同然のことだった。
しかし、真奈が心の隅で父に対して感じていた重い罪悪感が渡米自体を大変暗いものにしていたのは事実だった。
今度は父にちゃんと渡米の真の理由を伝え、何ヶ月にも渡る親子の話し合いと母の見事な説得力で、正式なる結婚の許可を父から得ることが可能となったのだ。
この有意義な月日を経たことで、真奈の中でのアメリカ移住に対する更なる覚悟もでき上がっていった。
父は、ついに、
「よし。分かった!やれるだけのことをやって来い。元気でいろよ」と涙ながらにも、娘の細い肩に優しい手を差し伸べたのだった。
前回と違って、今回は家族全員が空港まで見送りに来てくれた。父、母、兄に、
「行って来ます!」と言った後、真奈は、喉にグッとこみ上げて来るものがあって、胸苦しく、わざと振り返えらずにそのまま出国手続き所まで走るように足早に歩いて行ったのだった。
しかしながら、彼女の家族にはそういった真奈の複雑な心境にまで思いが届いていなかった。
最初から渡米に協力してくれていた母でさえ、
「なーんだ。あの子は振り返りもしないで行ってしまったよ」
と、不平とも取れる言葉を吐き出したのだった。
To be continued...
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