第13話 男子高校生、決意する
森の中を進んでいくと、男が立っていた。
男は腹部を抑えながらも不敵な笑みを浮かべていた。
「やるじゃないか」
「……どうも」
「この俺をここまでコケにしたのはお前がはじめてだ」
「べつに、コケにはしてないですけどね」
「ならば、俺の本気を見せてやろう」
男はそう言って、両手で印を結び、厳かな表情で言う。
「衝撃展開」
「……衝撃展開?」
早志はごくりと息を吞む。これから何が始まろうと言うのか。
「もしかしたら」とフェソソソが早志の小脇から飛び出して、着地する。「あの男も『展開者』かもしれないフェソ」
「ほぅ。嬢ちゃんも『展開者』なのかい?」
「こっちの男がそうだフェソ」
フェソソソの速すぎる指さしに、早志は苦笑する。
「そうか。お前が」
「あなたも展開者なんですか?」
「そうだ。俺は『衝撃展開』が使える」
「衝撃展開。なるほど」
「説明が欲しそうな顔をしているな」
「ええ、まぁ」
「ならば教えてやろう」
「めちゃくちゃ良い人じゃないですか」
「俺が衝撃展開を発動したことで、これから衝撃的な展開が起きる」
「……と思ったら、説明がめちゃくちゃ抽象的」
「そうやって、余裕ぶっていられるのも今のうちだけだぞ?」
「そうですか」
「というか、お前は『展開』しなくていいのか?」
「と言われましても、実はやり方がわからなくて」
「そうか。なら、死ねぇぇぇ!」
男が禍々しいオーラをまとう闇の球体を放ってきた。早志は、ヤバい気配を感じ取って避けようとする――が。
「ハヤシ、危ない!」
フェソソソが早志の前に立って、両手を広げた。
「フェソ!」
早志は慌てて手を伸ばす。このままでは、フェソソソにあの攻撃が当たってしまう。しかし、早志がフェソソソに触れるよりも先に、球体がフェソソソ――の頭上を通過し、早志の顔面に直撃して、爆発した。
「ハヤシィィィ!」
フェソソソの絶叫が響く。
フェソソソは涙を流して、膝をついた。
「くっ、フェソの身長がもっと高かったら、ハヤシを救えたのに!」
「ふん」と男は鼻で笑った。「衝撃的な展開だろ? さぁ、次はお嬢ちゃ――」
「生きてますけど」
「なっ」
フェソソソと男の視線が早志に集まる。早志は――顔が煤だらけになり、アフロになっていたが、無事だった。
「ば、馬鹿な! 俺の攻撃を受けても生きているだと!?」
「良かったフェソ~!」
フェソソソに抱き着かれるも、ハヤシは呆れ顔になっていた。何か重大なことが起きたようなんだけど、それがいまいち理解できなかった。
「な、なぜだ。なぜ、生きている!?」
「俺が知りたいですよ」
早志が首を振ると、顔の煤は全て消え、アフロだった髪型も普通の髪型に戻った。
「ハヤシの展開があいつの展開を上回ったんだフェソ!」
「……なるほど」
と言われても、自分で何かをした覚えが無いから、早志の困惑の色が濃くなる。
「ば、馬鹿な。お前は、展開が使えないんじゃ」
「いや、勝手に発動しているみたいです」
「くそぉ、俺はこんな展開を認めんぞ!」
そう言って、男は再び闇のオーラをまとった球体を放ってきた。
「ハヤシ、危ない!」
フェソソソが早志の前に立って、両手を広げた。
早志は右手を伸ばす――球体に向かって。
そして、右手が当たる直前でデコピンし、球体をはじき返した。
球体が男の元へ戻る!
「ぐおおおおお」
そして、男に当たって、爆発が起きた。
煙が晴れたとき、そこに立っていたのは、衣服がぼろぼろになって、重傷を負った様相の男だった。
「この俺を倒すなんてやるじゃねぇか」
「はぁ、どうも」
「でも、調子に乗るなよ。俺は、展開四天王の中でも最弱。他の四天王がお前を殺すに違いない」
「そうですか」
何か、ツッコむのも疲れてきた。
「くくくっ」
男は不敵な笑みを浮かべて、そのまま消えていった。
静寂が訪れ、早志はため息を吐く。
「なぁ、フェソ。今のって、何だったの?」
「展開者同士の戦いでハヤシが勝ったんだフェソ」
「そうなの? あんまりそんな気がしないんだが」
「うむ。それは、早志が展開者として未熟だから、展開が雑になってしまったんだフェソ」
「……そうなんだ」
「安心するフェソ。ハヤシが展開者としての技術を磨けば、きっと早志の納得がいくような展開ができるようになるフェソ。だから、頑張るフェソ!」
「……わかった。頑張る」
早志は展開者として強くなることを誓った。その方法は相変わらずわからなかったが――。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
急ではございますが、本話にて、いったん、完結とさせていただきます。
書いているうちに、構成を考え直したいと思ったからです。
構成がまとまったら、再び連載していきたいと思います。
改めて、ここまでお読みいただきありがとうございました。
クラス転移で異世界に召喚された俺、謎スキル『笑劇展開』のせいで追放されてしまうが、実は最強のスキルだったので、ケモ耳幼女と一緒にスローライフで無自覚無双します! 三口三大 @mi_gu_chi
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