第13話 おはよう


「ママ、大丈夫かい、疲れてるのかい?」


「あ、あなた…」


私はいつの間にかテーブルに突っ伏して眠っていた。

今日は結婚して10回目の記念日。

長いようであっという間に過ぎた10年だった。


「うん、良い香りだ…ビーフシチューとローストビーフかな?」


「ええ、今日は特別な日だもの 腕によりをかけて作ったわ」


「僕にもっと稼ぎがあれば高級ホテルのディナーでも用意できたんだが…」


「ううん、今のままでも私は十分幸せよ」

「家で作った方が料理も私好みの味付けが出来るし、それに…


「それに?」


「周りを気にせずたくさん食べられるしね!」

「フッ…君らしいな、次は僕の好みも聞いてくれよ?」


私は照れくささを隠すように静かに微笑む。

そして、おでこに軽くキスをされた。


「まだ日曜礼拝まで時間はある、少し休んだらどうだい?」

「有難う、そうするわ ちょっと根を詰め過ぎたかもしれない」


その時、私はふと心に浮かんだ事を口にする。


「ねぇあなた?神様って今何処にいるのかしら?」


「ああ、空の上からいつも僕たちを見守ってくれているよ」


私は安心したようにほっと息をつく。

今の生活は決して裕福ではないが、大好きな人達に囲まれて

暖かく、幸せに満たされていた。



「そう言えば こど…




   ドンガラガッシャーン!



おもちゃ箱をひっくり返したような轟音とともに

甲高い声が聞こえてきた。

どうやら二階の子供部屋の方だ。



「ジョージ!起きなさい!いつまで寝てるの?」

「今日はパパとママの大切なお祝いの日でしょ?早く支度して!」


「お願い、もう少し寝かせて…後5分だけ、エリー」





                            



  

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天国のランチは2時間待ち むふろん @muhuron

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