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「クヴィト島に留まることになるとはなあ」

 外を映すモニターを眺めながら、ニーノはつぶやいた。

 誰も住んでいない無人島である。だが、かつてアンドレー隊の面々はここでしばらく生き延びた。死因はいろいろ言われているが、少しでも暮らせたことこそがすごい、とニーノは考えていた。

 北極圏の島々は歴史にあまり登場しない。わざわざ赴こうという人は少なかっただろうし、記録に残っている「たまたま見えた」島がどれなのかは判然としないことがある。中には誰かが漂着したり、移住したりといったものもある。だが多くの島はただ海に浮かんでいるだけで、ここ数百年で「きっちりと」記録されたものなのである。

 ニーノは人類史上初めて、わざわざクヴィト島を目指し、そこに留まる人間になりそうだった。

 だんだんと恐怖も抱いてきた。周りはすべて海である。いつエイリアンβがやってくるかわからない。

「ニーノ!」

 突然通信がつながる。モニターに、セイスの顔が映った。

「ああ、しばらくつながらないから心配したんだ」

「色々大変だったんです。母親に疎開しようと強く引き止められて。あと、海底の水道管が切断されたらしくて、水が出なかったり」

「敵は賢いなあ」

「感心してる場合じゃなくて。あと、先生が出てこないんです」

「いつものことじゃなくて?」

「研究室の扉が開かなくて。窓も閉じていて、外から見ると完全に中が見えないようになっていて。ただ、連絡はとれるんです」

「要塞化かなあ」

「えっ?」

「先生はあの生物と戦うためのメンバーなんだ。そのために、シェルターにこもるみたいになっているのかもしれない。セイスは研究室で危険かもしれないよ」

「もうどこが安全かわかりません……」

「そりゃそうか」

 エイリアンβは様々なところに現れている。そして今のところ有効な対策はわかっていない。どこにいれば、どのように過ごせば安全なのか不明なのである。

「で、これからどうするんですか」

「先生にはここに留まるように言われた。エイリアンβ対策をすることになりそう」

「エイリアン……β?」

「ええとね……」

 なんで宇宙人の話をしているんだろう、と思いながらニーノは、セイスに詳細を説明するのだった。

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