第35話 魔スレチックパークのお披露目1

 それから時が経つこと2週間余り。


 1日フルで使える時は里の遊具製作を急ピッチで進め、それ以外の隙間時間はジェットスライダー2の製作に充てたり、ジェットコースターの調整に充てたりした。


 そうして、精力的に頑張ったおかげもあり――


「終わったー!!!」


 ついに今日、里内の全ての遊具が完成した。


 時間はちょうど午後に差し掛かった頃。


 遊ぶにはぴったりな時間帯なので、ヌヌンギさんのもとへ完成の報告に向かう。


 モニターとしてロロネアとかにはちょくちょく参加してもらったけど、まだ一般の人達には全く見せてないんだよね。


 人がいないほうが作業しやすいだろうというヌヌンギさんの意見により、お披露目は完成後という話になっていた。


 それまでは従来通りジェットパークで遊んでもらうので、パーク内の魔スレチックも今はそのまま残している。


 結局、里に作った魔スレチックは全て1から作った新作という形だね。


 それと、置き換え予定の“ジェットスライダー2”も昨日完成させたから(別場所でロロネアによるテスト済み)、里の遊具のお披露目に合わせて設置、公開する。


 なお、さらなる改良を施すジェットコースターの進捗だけど、こちらもあと数日でお披露目に至る予定。


 里の遊具と同時に完成させるか迷ったけど、ひとまずは正式に依頼されていた里の遊具とそれに関連するジェットスライダー2の製作を優先した。


 それにさ、ジェットコースターのお披露目はトリにとっておいてもいいかなと思ったんだよね。


 他の遊具と比べても圧倒的に“遊園地”らしい魔遊具だし、その分個人的な思い入れも一入ひとしおだ。


 遊園地作りの布石としても大きな意味を持つと思うから、無理に他の遊具と足並みを合わせなくてもいいかなって。


 ヌヌンギさんの家に到着した僕は、ドアをノックして自分の名前を告げる。


 初めて来た時は門番の男性がいたけど、普段は別にいないみたいなんだよね。


 用がある時は訪ねていいと言われてるし、やっぱり小国というより村の形態が近いかも。


 ノックしてしばらく待っていると、中から綺麗な女性が顔を出す。


 ヌヌンギさんの妻のメメリさんだ。


 この前は別邸に移動していたようで、先日挨拶を行った。


 メメリさんにヌヌンギさんを呼んでもらい、遊具が完成したことを報告する。


「おおっ、仕事が早いね!!! とても助かる!! ぜひ様子を見てみたいのだが、これから伺ってもいいかね?」

「もちろんです」


 僕達は固く握手を交わし、お披露目のための準備に移る。


 ヌヌンギさんは完成を楽しみに待つということで、まだ遊具を見せてないんだよね。


 お披露目相手がヌヌンギさんだけでは寂しいから、他の人達もいくらか呼ぼうという話になった。


 今回はロロネアに連絡を取り、以前彼女がパークに連れてきた女性達を呼んでもらうことに。


 あとから聞いた話によると、あの人達は右霊隊の部下だったらしい。


 また、男性陣にもお披露目したいということで、ガガイアさんにも声を掛ける。


 こういうこともあろうかと、話せる君を渡してたんだよね。


 連絡すると『すぐに準備しよう』と返ってきた。数人の部下も連れてきてくれるということだ。


 さらに、ヌヌンギさんに連れそう形でメメリさんも見学を希望。


 彼女も既にジェットパークを訪れており、僕の遊具を気に入ってくれている。


 同様に、ヌヌンギさん達の子供たち――2人の息子と1人の娘もお披露目に付いていくことになった。


「あとは、精霊様にも一報入れたほうがいいですかね?」

「うむ、それがいいだろう!」


 里の遊具については精霊様も興味を示していたので、完成を伝えることにする。


 他の皆が集まるのを待つ間、僕とヌヌンギさんで大霊樹の神殿を訪ねたところ、『儂も試してみたいのう』との返答が。


 人型の霊樹に分体を宿らせる形で同行することが決まった。



 ◆ ◆ ◆



 ヌヌンギさん一家、ロロネアとその部下達、ガガイアさんとその部下達、精霊様。


 中央広場の一角に参加メンバーが揃ったところで、遊具エリアへ出発する。


 精霊様がいると目立つかなと思ってたけど、器に入った分体モードだとそんなに注目されないようだ。


 先日のように本体が外に出ることは滅多にないけれど、分体の形でこうして出ることは時々あるみたい。


 この形であればリスクなく外出できるため、ジェットスライダー2を紹介するジェットパークにも付いて行くつもりとのこと。


 精霊様が積極的に動くのは珍しいと、皆嬉しそうに笑っていた。


「――ここが入り口です」

「おお! これが!!」


 広場からしばらく歩き、里の遊具エリアに到着した。


 エリアの名前は“魔スレチックパーク”。


 雰囲気を出したかったので、パークに入る道を少し整備して、アーチ型の入園ゲートを設置している。


「こんなものを作ったのだな」

「雰囲気作りのためにね」


 ゲートは最後の仕上げに作ったので、モニターとして参加していたロロネアも見るのは初めて。


 物珍しそうにゲートを見ながら、パーク内へと入っていく。


「他にもいろいろと変わってるから、ロロネアも驚くと思うよ」

「ほう、それは期待できるな」


 ロロネアに試してもらったのは、全てデザイン前の仮の遊具。


 今回はデザイン面でも結構力を入れたから、かなり印象が変わるんじゃないかな?


 あ、それと、同じくモニターを務めてくれたミルミーさんを呼ばなかったのは、ここ数日間研究で忙しいみたいだから。


 調査に出ているレレノンさんとかもそうだけど、彼女達には時間がある時にゆっくり堪能してほしい。


「さあさあ、まずは単純な遊具のエリアですね」


 魔スレチックパークのゲートを抜けてすぐ、ちょっとした公園エリアが現れる。


 魔スレチック用のスペースとは別に作った小規模スペースの1つだ。


 ここでは幼い子供でも遊べるように、いわゆる“普通の遊具”を作っている。


 ブランコ、シーソー、滑り台(ノーマル)、雲梯、ジャングルジム、回転ジャングルジム、スプリング遊具等々……


 ちょっと豪華な広めの公園って感じだけど、初見の人にはかなり面白く映るらしい。


『リベルよ、これはどのように遊ぶのじゃ?』

「これはこうやって跨って――」

「リベル君、これは……?」

「これはこんな感じで掴まって――」


 興味津々に訊いてくる一同に、各遊具の遊び方を実演する。


 これらの遊具はゲート同様最後に設置したものなので、ロロネアも不思議そうに相槌を打っていた。


 あと、ヌヌンギさんの息子の1人(僕より1個下らしい)がはしゃぎながら遊んでたから、こっちの世界でも子供受けは抜群みたいだ。


「まさかこんな物まで作ってくれるとはね!」

『リベルの発想は面白いのう』


 楽しげな皆と15分ほど滞在した後、次のエリアに移動する。


 パークのメイン遊具である魔スレチックの1つがあるエリアだ。


 木々の間から魔スレチックの様子が見えはじめると、一同からざわめきが上がる。


「リベル君、あれは……!?」

「はい、あれはですね――」


 僕は皆を先導しつつ、木々の向こうで遊具――“火の魔スレチック”の説明を始めた。

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