第24話 め……めっちゃいる

 次の日、僕は久々にレクシオンの街を見に行った。


 いつも通りに通りの様子を観察したり、レストランで軽食を食べたり、魔道具店の商品を見たりした。


 魔道具店ではいつも新しいアイディアを貰えるけど、今回もいろいろと参考になった。


 特に僕の目を引いたのは、調理関係の魔道具コーナー。


 主婦の日常に役立ちそうな魔道具達が所狭しと並んでいた。


 食に関する魔遊具はまだ作ったことがないけど、ジェットコースターが出来た後にでも試してみようかな。


 いずれ作る予定の遊園地では、ぜひフードメニューも充実させたい。


 せっかく前世の知識があるんだし、それを活かした料理を出すのも面白そうだよね。


 レクシオンの街から帰ってきた僕は、しばらくルティアの授業を受けた後、森でのモンスター狩りに繰り出した。


 最近はモンスター狩りに割く時間が減ってたし、ジェットコースター作りに向かうには使える時間が少なめだったからね。


 それに、今日はロロネアから連絡が入っていて、他の森霊族達をジェットパークに連れて行く予定だと伝えられている。


 パークの初日は森霊族水入らずで楽しんでもらえればという気持ちもあった。


 そうそう、モンスター狩りで思い出した話が1つ。


 ジェットパーク周辺のモンスター達は、やっぱりかなりの強さだったみたいだ。


 ロロネア達は普通に倒してたけど、後から図鑑で調べたところBランク相当のモンスター達がゴロゴロいた。


 Bランクということは、Bランクの冒険者パーティ、またはソロのAランク冒険者が必要な強さということ。


 特にロロネア達が最初に倒した赤虎等は、Bランクの中でも最上位クラスらしい。


 赤虎というのも森霊族特有の呼び方みたいで、図鑑にはデビルタイガーという名前で載っていた。強そう。


 Bランクの最上位を1人で屠れることから、ロロネア達は最低でもAランク中位、下手すればSランク以上の強さがあると思われる。


 まあ、それを言ったら僕もなんだけど。


 レーザーガンやストロングローブ等は時折アップデートしているので、最近はますます攻撃力が上がっている。


 それに、僕自身のレベルが上がっているのはもちろん、魔力の扱いも日々向上中だ。


 全身に魔力を巡らせたり、衣服のように魔力を纏うことで、肉弾戦の強さも数段レベルアップした。


 もはや森の浅い部分に出てくるモンスターくらいなら、デコピンのように弾いた魔力の塊だけで討伐できる。


 マンガみたいでかっこいいよなーと思って試してみたら、本当にできたので驚いた。


 想像力次第でいくらでも応用が利くから、楽しみながら強くなれるのがいいよね。


 さすがは【遊者】。一石二鳥……いや、三鳥四鳥レベルの素晴らしい能力だ。



 ◆ ◆ ◆



「さーて、今日も頑張るぞー!」


 翌日。


 屋外作業にぴったりな快晴の中、僕は揚々と屋敷を出る。


 今日の予定はレール敷設作業の続きだ。


 そのままパーク内に転移してもいいんだけど、せっかく転移ステーションを作ったのでクラフト小屋から行くことにする。


 自分だけの拠点から出発する感じ、結構気に入ってるんだよね。


 ちなみに昨晩、ロロネアからの通信で「明日も新しい森霊族が遊びに行く」と聞いている。


 着実にパークの話が広まっているみたいで何よりだ。


 公園というのは賑やかであってこそだからね。


「何人くらい来てるんだろ? 朝だしまだ来てないかな?」


 僕はそう呟きながら、見えてきた転移ステーションに向かう。


 っていうか、今から行くことをロロネアに伝えていなかった。


 向こうに移動したら、話せる君で連絡しておこう。


 そう思いつつ転移ステーションに乗り――


「ええっ!?」


 直後に転移したパーク内で予想外に光景に出くわした。


「め……めっちゃいるんだけど」


 パーク内には既に先客、新顔の森霊族達がいた。その数ざっと15人~20人。


 仮にいたとしても数人だろうと思ってたけど、この人数にはびっくりだ。


 皆ジェットスライダーの階段にズラリと並び、わいわいと騒ぎながら各々の滑走を楽しんでいる。


 間もなくするとその中の1人が僕に気付き、よく見ると紛れていたロロネアを呼んだ。


 ロロネアは僕のほうを見ると、笑顔で手を振りながら近づいてくる。


「リベル! すまんな、気付かなくて」

「いいよ、連絡してなかったし。むしろちょうどいてくれてよかった。てかすごいね、こんなに集まってるなんて。転移した瞬間びっくりしたよ」

「ジェットスライダーが評判でな。昨日連れてきたのは数人だけだったのだが、そこからさらに話が広まったのだ」

「なるほど」

「外部には漏らさぬよう注意してあるから、その点は心配しなくていいぞ」

「ありがとう。まあ心配はしてないよ」


 ロロネアのことは信用してるし、そもそも森霊族が里外に出ること自体が珍しいからね。


 ミルミーさんみたいなタイプはほとんどいない。


「そういえば、ミルミーさんとレレノンさんは来てない感じ?」

「ああ、ミルミーは里のラボにいるはずだ。レレノンは昨日話した感じ、後から来ると思うぞ。あいつは朝に弱いから、もう少し遅い時間だろうがな」

「なるほどね」


 たしかに朝に弱そうな感じがする。


 その後、新しい森霊族達をロロネアに紹介してもらい、それぞれと簡単な挨拶を交わす。


 森霊族はロロネアを除いて全部で18人。


 15人~20人くらいかなと思ったけど、やっぱりそれくらいいたね。


 あと、ロロネアとかミルミーさんの名前でなんとなく予想できたけど、皆名前に繰り返しの音が入っていた。メメリさんとかルルンさんとか。


 理由が気になって聞いてみたところ、特に大きな意味はないらしい。


 精霊の里内に浸透した伝統的な名付けなのだそうだ。


「どうしよう……思ったよりも一気に人数が増えたし、何か遊具を追加したほうがいいかな?」


 簡単な挨拶を終えた僕は、腕を組みながら呟く。


 皆の話を聞いた感じ、まだまだ数が増えそうなんだよね。


 レレノンさんも別の森霊族達を連れてくるかもという話だし、ジェットスライダーの混雑がすごいことになりそうだ。


 余った土地を利用して、追加の遊具を作るべきかもしれない。


 ただ、予定通りに森での作業も進めたいから、手早く作る臨時的なものだけど。


「大人でも楽しめて、大人数でも使える遊具……うーん、アスレチックとか?」


 ふと頭に浮かんだのは、前世でも人気だった本格的なアスレチック。


 大規模な公園とかテーマパーク等にあるタイプだ。


 前世の基準だと森霊族には物足りないかもしれないけど、異世界仕様の高難易度にすれば皆も楽しめるんじゃないかな?


 敷地が余っているとは言ってもそんなに広くはないから、上方向に伸びるタイプの立体アスレチックなんてどうだろう?


「ロロネア、ジェットコースター作りなんだけど、ちょっと待ってもらっていい? 先に作っときたいものができたから」

「構わないぞ。実を言うと、今日はまだジェットスライダーに1回しか乗っていなくてな。遊びながらゆっくり待とう」


 ジェットスライダーをちらりと見て、笑顔で答えるロロネア。


 こうして、森での作業を始める前に、急遽森霊族用のアスレチックを作ることになった。

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