第23話 レール作りと即興アイテム
翌日の午前、ジェットコースターの作りのためにジェットパークへと転移する。
本日進めていくのは、レール調整とそれを実際に敷く作業。
人が乗る車体の部分については、レールを敷き終えた後に作るつもりだ。
ちなみにレールの設計やデザインについては、昨日の段階で大方済ませている。
ロロネアに連絡すると30分ほどで来られるとのことだったので、レールの出来を確認しつつパーク内で待つことにした。
「――おおっ、こうして見るとやっぱりかっこいいね!」
僕はパーク内の地面に幅約1メイル、長さ4~5メイルのレールを生成する。
少し黒っぽい色の木製レールだ。
昨日は小屋内で調整したから、この長さのレールを生み出すのはこれが初めて。
地面に敷いたので電車のレールっぽくも見えるけど、高さを出せばジェットコースター風になるだろう。
「木製っていうのも趣があっていいよね」
木製のレールを選んだのは、森との調和を重んじたため。
暗めの色合いが非常にかっこよく、良いデザインになったなと思う。
木製レールはメンテナンス面で大変なイメージもあるけど、【遊者】謹製の魔遊具なので心配はない。
芯まで魔力が染みているので鋼鉄以上に頑丈だし、向こう1000年は余裕で持つだろう。知らんけど。
「うん。いい感じにできてるし、仮のマシンでも乗せてみようかな」
レールの出来を改めて確認した僕は、実際に使えるかどうか仮の車体で試すことにする。
いざ車体を作った時に上手く動かないと困るからね。
1~2分でサッと作った台をレールに噛み合わせ、動くように魔力を注ぎ込むと、台は滑らかにレール上を移動する。
特に魔力の淀み等も感じないので、正式にこのレールを採用してもよさそうだ。
後から作る車体についても、この台をベースに作れば問題なさそうだね。
僕は仮の車体を消去して、もう少し長めのレールを敷く練習をする。
カーブを描く形のレール。
上昇して下降するレール。
緩やかに捻じれたレール。
同じ規格で形を変えるにはちょっとしたコツがいるけど、しばらく練習しているうちに慣れてきた。
この調子なら、森の中のコースも滞りなく敷設できそうだ。
ちょっとしたミニコースを作って遊んでいると、転移ステーションから魔力が溢れてロロネアとミルミーさんが転移してくる。
「――なっ!? それは一体何だ……!?」
「またすごそうなものを作ってますね……」
「ロロネア、ミルミーさん。おはよう。レレノンさんはいない感じ?」
「む? う、うむ。レレノンは少し外に出ていてな。して、その奇妙な物体は……」
「これはジェットコースター、森に作る新しい遊具の一部だよ」
「おおっ! これがそうなのか!!?」
「入り組んだ形をしてるんですね」
「ああ、これはレール部分だからね。この上を車体が……」
そう言って仮の車体を出そうとした僕は、ふとその手を止める。
車体が動くところを見せるのは、ジェットコースターの完成後にしようかな。
ロロネア達はジェットコースターの存在を知らないわけだし、サプライズ的に乗ってもらったほうが面白い。
「……いや、詳細は後日また話すよ。とにかく、これをどんどん伸ばしていって、森の中にコースを作る感じかな」
「ふむ、なるほど……?」
「レール……鉱山のトロッコ的な感じでしょうか? 見た目は全く違いますが……」
それぞれに頷くロロネアとミルミーさん。
ロロネアは何も分かってないみたいだけど、ミルミーさんはトロッコを想像したみたいだね。
それにしてもトロッコか。言われてみれば、少し似た要素があるかも。
ただ、この世界のトロッコはめちゃくちゃ簡易的だから、ジェットコースターを想像するのは難しいだろうね。
サプライズ的には何の支障もないはずだ。
「それじゃあ、さっそく作っていくよ」
「うむ! 護衛は任せろ!」
胸を張るロロネアに笑いながら、僕はパークの出入口へ向かう。
途中、パーク内の乗り場から作るのが順当かなとも思ったけど、ロロネアも張り切っていることだしそのまま森に出ることにした。
実際の工事ならともかく、【遊者】のクラフト能力があればどこから作ってもほとんど同じだしね。
「……む? 入り口の上に何か増えてないか?」
「ああ、そうだった。公園名の看板を付けたんだよ」
出入り口を抜けた後、看板を見せて名前の由来を説明する。
「ジェットパークか。良い名前だな」
「はい。なんかお洒落な感じがします」
「そう? ありがとう」
お洒落な感じなのかは分からないけど、とりあえず礼を言っておく。
そうして、2人と共に森へ出た僕は、レールの敷設作業を開始した。
◆ ◆ ◆
「――ふぅ、まあまあ進んだね」
レールを敷きはじめて数時間後。
森の中に伸びたレールを見ながら、僕は額の汗を拭う。
「今日のところはこんなもんかな」
「む? もういいのか?」
「うん。難しい部分以外は終わったし、続きはまた後日にするよ」
もう少しで空が赤くなるし、切り上げるにはちょうど良い頃合いだ。
敷設作業も思った以上のペースで進み、大木のトンネルや泉のエリア以外は大体の箇所に敷き終わった。
まあ、大まかなコースにレールを敷いただけで、アップダウンとかは加えてないから、進捗としては全体の1割程度だけど。
それでも、初日の作業としては十分に上出来と言える。
「しかし、作っているところを見ていると、新しい遊具への期待が高まるな」
「はい。完成が楽しみです」
「はは、楽しみにしてて」
今日作ったのは基礎中の基礎の部分だから、2人が見たものはまだまだ序の口レベル。
この先の魔改造で数段階はパワーアップさせる予定だ。
なんなら、搭乗者達へのサプライズのため、残り部分は1人で作ろうかなーなんて思っている。
実際は護衛がいなくても大丈夫だし、エリア全体に結界を張ればロロネア達も納得するだろう。
そんなことを考えながら、僕は2人とパーク内に転移する。
「リベルはもう帰るのか?」
「そうだね、そうするよ」
遅いとルティアに怒られるし。
「ロロネア達は好きに遊んでいいからね。前も言ったけど、僕がいない日でも自由に来ちゃっていいから」
「助かる。他の森霊族も呼んでいいか? ここに興味を持っている奴らが結構いてな」
「もちろん! 遠慮せずにどんどん呼んじゃってよ。皆で使ってこその公園だし」
「うむ。ただ、結界はどうすればいい? 私達は転移で来られるが、初めての者は入れないだろう?」
「あ、そっか」
僕は「うーん」と首を捻り、対応策を考える。
結界を通り抜けられるアイテム的なやつを作るのが簡単かな。
とりあえず多めに作っておいて、必要な分だけ渡してもらえばいい。
あとは、送る君2号に集団転移機能を付けるのもアリだ。
ロロネア達は転移で来られるわけだから、それと一緒に来てもらえば解決する。
あ、でも帰る時は歩きだから、どのみち通行許可アイテムは必須だね。
「む? 何を作っているのだ?」
「カード……ですか?」
「うん、入園カード……所持していれば結界を通れるカードだよ」
「おおっ! そんなカードが!!」
「すごい! この一瞬で作ったんですか!?」
「はは、2人の送る君2号も貸してもらえる?」
驚く2人から送る君2号を貸してもらい、集団転移機能も即席で追加する。
2人の体に触れた状態で転移すれば、他の人達も一緒に来られるようになったはずだ。
「――それじゃあまた」
ついでにレレノンさん用の新・送る君2号もその場で作って渡した僕は、ロロネア達に別れを告げて転移する。
レール作りも順調に進んだし、充実した1日だったね。
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