第22話 クラフト小屋を作ろう

 それから30分ほどが経ち、僕達は公園に戻ってきた。


 ロロネア達はそろそろ帰るとのことなので、その前にバッテリーチャージ用の魔遊具を作ることにする。


「――はい、お待たせ。これで簡単にチャージできると思うよ」

「む? これは?」

「不思議な形ね」

「どう使うのでしょうか……?」


 完成させたチャージ装置――“魔力チャージャー”を見て疑問符を浮かべる3人。


 魔力チャージャーは1本のケーブルと2種類の器具からなる魔遊具だ。


 ケーブルは器具とバッテリーを繋ぐもの、2種類の器具はそれぞれ人からのチャージと魔石からのチャージに対応している。


「3人とも、下見前に渡した送る君2号を出してもらえる? ちょっと拝借するね」


 僕は3人に送る君2号を出してもらい、そこに入ったバッテリーにケーブルの挿入口を追加する。


「これでよし、と。そのままチャージ方法も説明するよ」


 チャージ方法は至ってシンプル。


 バッテリーと2種類の器具のどちらかをケーブルで繋げば準備は完了だ。


 まず手ずからチャージする場合だけど、パネル状の器具に手をのせて、魔力を注ぎ込めばいい。


 魔力を上手く注ぎ込めない時は、パネル端に付けたボタンでオートチャージも可能だ。


 もう1度ボタンを押せばチャージが止まるので、魔力操作に自信がなくてもチャージできる。


 一方、魔石からチャージする場合は、円柱形の容器型器具に魔石を入れ、同じくボタンをタップする。


 魔石の魔力がなくなるとランプが点灯するので、魔石替えのタイミングも分かりやすい。


 一通り実演して説明し、3人に送る君2号を返却する。


「はい、魔力チャージャーもどうぞ。これで好きなだけチャージできるね」

「う、うむ……ありがとう。しかし、貰ってもいいのか? 正直、送る君2号も一時的に渡されただけだと思っていたのだが……」

「え? そうだったの?」


 僕がそう言うと、レレノンさんとミルミーさんもコクコクと頷く。


 まあたしかに、転移ステーションを紹介ついでにお試し的な感じで渡したけど……


「いや、送る君2号は3人にプレゼントするよ。それがあればここに来るのも簡単だし」


 それに、3人には下見でもお世話になったからね。


 トンネルの木と泉の存在を教えてもらったおかげで、素晴らしいコース計画を立てることができた。


「あ、それとミルミーさん。魔力生成パネルだけど、僕がいない時も遠慮せずに触っちゃっていいからね。なんなら、1つくらい持ち帰っちゃってもいいし」

「……っ!? 本当ですか!?」

「うん。ただ、一応周りには秘密にしてるから、外部には漏らさないでほしいかな。精霊の里内ならいいんだけど、チェスターとかそっちにはね」

「大丈夫です……! ラボの中でじっくり観察しますから!」


 ミルミーさんは興奮気味に身を乗り出す。


 並べてあったパネルの1枚を渡して上げると、「ありがとうございますっ!!」と感激した様子で目を輝かせていた。


「――ではまたな、リベル」

「また今度!」

「またねー」

「うん。また来る時は連絡するよ」

 

 僕は公園から出る3人を見送った後、アイテム袋からジェットバイクを出す。


「まだ少し時間があるし……」


 モンスターでも狩りながら帰ろうかな。



 ◆ ◆ ◆



 その翌日。


 さっそくジェットコースター作り開始! といきたいところだけど、今日はあいにく午後の早い時間から用事がある。


 なので公園に行くかわりに、森の入り口付近でとある場所を探していた。


「――お、いい感じ!」


 僕が見つけたのは、森の中に小さく開けた数畳のスペース。


 近くには二股に分かれた大木が生えている。


「よしよし、ここでいいかな」


 僕は1つ頷くと、クラフト台を生成する。


 この場所に作ろうと思っているのは、転移ステーション兼クラフト作業用の拠点。


 昨日、モンスターを狩りながら公園から戻った時に思ったんだよね。


 こっちからあっちには簡単に転移できるけど、逆はないよなーって。


 もちろん、転移ステーションなしでも転移は簡単にできるけど、せっかくなら作っておきたいというか……一言で言えばこだわりだね。


 で、こちら側にもステーションを作るとなると、なるべく屋敷から近いほうがいい。


 ここは屋敷から歩いて数分だから、まさに理想的な場所だった。


 また、クラフト作業用というのは、付随的に生まれたアイディアだ。


 最近はルティアの勘が鋭いこともあり、屋外でのクラフト作業が増えたんだけど、その場所は時によって様々。


 せっかく転移ステーションを設置するんだから、その機会にクラフト小屋でも作ろうというわけだ。


「まずはクラフト小屋からかな」


 僕はホログラムを動かしながら、クラフト小屋を作っていく。


 小屋と言っても普通の小屋ではなく、ツリーハウス風のイカした小屋だ。


 二股に分かれた大木の近くを選んだのにはちゃんと理由がある。


 粗削りな状態で小屋を生成し、木に馴染むよう調整すること数十分、イメージ通りのクラフト小屋が完成する。


「秘密基地って感じでいいね!」


 森の中にひっそりと溶け込むデザインがめちゃくちゃかっこいい。


 前世の子供時代はあまり外に出られなかったから、秘密基地とか憧れてたんだよなぁ。


 しみじみと頷いた僕は、転移ステーションの設置に移る。


 設置場所は、小屋から伸びる螺旋階段を下りた先。


 小屋内に設置することも考えたんだけど、あまり広くはないので外にした。


 ステーションの設計図は保存済みなので、設置にかかる時間は一瞬だ。


 階段横にステーションを置いた後、直接手を触れて公園のステーションと繋がるように設定する。


「よし、これで使えるはず」


 今までは転移先の目印でしかなかったけど、これでポータル的な使い方ができるはず。


 さっそく試しに乗ってみると、一瞬で視界が変わって公園のステーションに転移した。


「おおっ!! めちゃくちゃゲームっぽい!」


 これだよこれ! これぞ転移“ステーション”だよ!


 あ、ロロネア達が誤って転移しないよう、ちゃんと使用者制限はかけてあるよ。


 これまで同様に転移先の目印としても機能するし、送る君2号を使った転移にも影響はない。


「ロロネア達は来てないか」


 自由に来てもいいと伝えてあるけど、今は誰も公園に来てないみたいだね。


「ってか、そうだ。公園と言えば……」

 

 僕はふと手を叩く。


 たしか昨日の朝、公園名を考えてたんだった。


 ジェットスライダーとジェットコースターにちなんで、ジェットパークだったかな。


 あの時はまだ森の開発許可が出てなかったけど、ジェットコースター作りが確定したし公園名も決定でいいだろう。

 

「忘れないうちに看板でも付けとこうかな」


 看板くらいならすぐに作れるので、この場でパパっと済ませることにする。


 入り口の上部に取り付けるシンプルなタイプでいいかな。


 森の公園っぽい木の板に白文字で『ジェットパーク』と刻んだものを、フェンスに引っ掛けて設置する。


 なんというか手作り感満載だけど……これはこれで悪くないね。自分で作ったって実感が湧く。


 看板の出来に満足した僕は、転移ステーションでクラフト小屋に帰還する。


 その後、午後までに空いた1時間ほどを使って、ジェットコースターのレールデザイン等を小屋の中で考えるのだった。

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