第21話 つよつよ3人衆とコースの下見

 ロロネア達と一緒に森を回ること約1時間、下見は順調に進んでいた。


 何と言っても、ロロネア達が強いんだよね。


 精霊の里付近は強いモンスターが多いみたいで、赤虎の他にも黒狼や鎧熊等いろんな奴が出てきたけれど、どれも現れたはなからロロネア達に瞬殺された。


 まずロロネアだけど、大弓と魔法を組み合わせた攻撃がとにかく強い。


 的確なサポートからとどめの一撃まで、幅広く器用にこなせる。 


 背中の矢筒は特殊な魔法の矢筒だとのことで、使用者の魔力が残る限りいくらでも矢を作れるそうだ。


 魔力製の矢は思いのままにコントロールが利き、追尾の動きや複数の矢の同時射出も可能にする。


 正直、ロロネアが1人いれば護衛は十分なんじゃと思えるくらいに強い。


 ただ、それはロロネアだけでなく、他の2人にも言えるけど。


 レレノンさんは、超絶的な身のこなしとナイフ捌きで相手を屠るスピードタイプ。


 スピード重視型は攻撃力が落ちるイメージがあるけど、彼女の場合はそうではない。


 赤虎の頭を落とした時のように魔力を凝縮させることで、瞬間火力を爆発的に高めることが可能なのだ。


 ロロネア曰く、こと対人戦で彼女の右に出る者はいないとのこと。


 ミルミーさんは、研究者であると同時に卓越した魔法の使い手だ。


 性格的には戦闘向きではないにせよ、純粋に全ての魔法のレベルが高く、魔法の発動スピードも極めて速い。


 基本的にはサポートを務めているけれど、その気になれば1人でも相当強いはずだ。


 ちなみに、ロロネア達は3人とも祝福を持っているらしい。


 ロロネアは【大魔弓士】、レレノンさんは【体術仙人】、ミルミーさんは【大魔導士】だ。


 どれも聞くからに強そうで、レアな祝福であることが分かる。


 さらに3人とも精霊の里の精霊と契約を結んでいるらしく、精霊由来の特殊な魔力を使えるのだとか。


 そんなつよつよな3人が常に警戒に当たっているのだから、僕の出る幕があるはずがない。


 遠くのモンスターはロロネアの矢が片付けるし、近くのモンスターはレレノンさんのカモだし、群れで行動するモンスターが現れてもミルミーさんの広範囲魔法が炸裂する。



 あ、それと、倒したモンスターの魔石については僕が半分貰うことになった。


 本当は全部あげるって言われたんだけど、さすがに遠慮しといたよ。


 そうそう、モンスターの魔石といえば、コレクターガンも皆にお披露目した。


 絶対に驚かれるだろうなーと思ったけど、想像以上にいいリアクションだったなぁ。


 興奮気味だったミルミーさんの言によれば、ただ手元に引き寄せるのではなく、自動的に収納される機構がすごいらしい。


 ついでにアイテム袋(アイテムボックス)も中々に貴重な品ということで、話の流れで自作した旨を伝えると驚かれた。


 とまあ、いろいろと賑やかなやり取りを挟みつつ、サクサクと進んできたわけだけど――


「どうだ? 下見は捗っているか?」

「まあね、ロロネア達のおかげで順調だよ。とりあえず、この周辺を利用するのは確定かな」


 僕は周囲の木々を見ながら言う。


 この辺りに生えている木は、森の浅い部分に比べて全体的に幹が太い。


 そのため迫力は十分で、木と木の間の隙間も十分にあるため、問題なくレールを通すことができそうだ。


「ただ、できれば他に何か盛り上がるポイントがあればいいんだけど……」

「盛り上がるポイント?」

「そうそう、盛り上がるポイント。今回作る遊具は森の中を進むわけだけど、基本的には同じ景色でしょ? だからたとえば特徴的な形の木とか、目立つ何かがあれば面白いかなと思ってさ」

「なるほど。特徴的な形の木、か……」


 ロロネアが顎に手をやって呟くと、レレノンさんが「ねえ」と口を開いた。


「たしか、あっちのほうに変わった木がなかった?」

「む……? そうだったか?」

「あ、あの根っこの下が空いてるやつですかね」

「そうそう、それ」

「ああ、あの魔脈のエリアか!」


 3人は顔を見合わせながら言葉を交わす。


 すごいね、さすが森の民。特徴的な形の木に心当たりがあるみたいだ。


「ねえ、その木ってここからどれくらいの場所にあるの?」

「うーむ……歩きで10分ほどだろうか」

「方向的には少し戻ることになるわね」


 レレノンさんが来た道の方角から少し逸れた方を指でさす。


「なるほど。案内してもらってもいい?」


 公園からさらに遠い場所なら諦めてたけど、戻る分には好都合だ。


 レレノンさんの先導でその木の場所まで連れて行ってもらう。


「見えてきたわ。あれね」

「おおっ!」


 そこにあったのは、周りの木よりも二回りは太い老樹だった。


 その大きさだけも十分にすごいけど、注目すべきはその形状。


 幹の根本部分――地面と接している部分に、巨大な空洞が出来ているのだ。


 稀にトンネルみたいに根本を通れる木があるけど、あれの巨大版という感じだね。


「これは使えるね」


 僕はニヤリと口角を上げる。


 これだけ大きい空洞があれば、木の下にレールを通すことも可能だ。


 枝を編んだトンネルを通らせる案は浮かんでたけど、まさかこんな掘り出し物があったとは。


 枝のトンネルと両方採用すれば、かなりスリリングなコースになりそうだ。


 その後、他にもいくつか変わった木々があると言われ、そちらも案内してもらう。


「ここらの地下には魔力が流れていてな。その影響で変わった形になるのだと考えられている」

「なるほど」


 次に見せてもらった大木は、さきほどと違い幹のど真ん中に縦穴が空いたタイプだった。


 1本目に比べると穴が狭めだが、トンネルとしては十分に使える。


 他にもいくつか面白い形の木があったので、トンネルの木と合わせて利用したいと思う。


「そういえば、近くに泉もあったはずよ。見に行ってみる?」

「泉があるの!? 見たい!」


 さらに、レレノンさんの厚意により、近くにあるという泉を教えてもらう。


 まさに隠れた秘境という感じの、とても綺麗な泉だった。


「いい感じの場所だけど、ここって遊具に利用しちゃって大丈丈? 皆の憩いの場とかだったら、なんか申し訳ないんだけど……」

「気にしなくても大丈夫よ。この感じの泉ならそこら中に結構あるから」

「うむ。精霊様の開発許可も出ているし、心配はいらないぞ」

「ありがとう」


 利用しても問題ないようなので、この泉もコースの候補に入れておく。


 大木のトンネル達と、神秘的な泉。


 最高のコースになる予感がビンビンだ。


 想定していたエリアからは少し逸れるけど、コース全体をこちらに寄せれば問題ない。


 こうして、無事に森の下見と大まかなコース選定が完了するのだった。

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