第18話 魔遊具紹介
数分後。
3人が落ち着きを取り戻したので、他の魔遊具も簡単に紹介することにした。
まずは魔力バッテリーから。
3人に渡した送る君2号にも魔力バッテリーを採用しているので、送る君2号に入ったバッテリーを見せながら説明する。
バッテリーと言っても意味は通じないので、魔力を溜め込む装置だよー、チャージすれば繰り返し使えるよー、くらいの内容だ。
あ、ちなみに説明時の口調については、ロロネア相手に合わせて崩している。
レレノンさんとミルミーさんも問題ないと言ってくれたからね。
そうして一通り説明すると、3人は目を丸くしながらバッテリーを見た。
「この中に魔力をチャージ……溜め込むことだったか? そんなことが可能だとは……」
「たしかに、聞いたことがないわね。ミルミーはどう?」
「わ、私も初耳です。興味深いですね……」
ロロネアが持っていたバッテリーを手に取り、まじまじと観察するミルミーさん。
僕はチャージ方法を説明しようとして、開きかけた口を閉じた。
開発者の僕は感覚的にチャージできるけど、他の人にとっては難しい可能性もあるな。
特に、魔石から魔力を移動させる時にはコツがいるし、専用の魔遊具を作ったほうがいいかもしれない。
「チャージ方法は後でまた説明するよ。専用の魔遊具を作るから」
「なっ! また何か作るのか!?」
「後でね。あ、それと――」
僕はジェットスライダーを指さして、バッテリー式に変更したことを教えておく。
同時に、スイッチによるオンオフシステムを導入したことも伝えた。
「なるほど。道理でジェットスライダーの光が消えているわけか」
「うん。ちなみに、バッテリーとスイッチがある場所にはロックがかかってるから。一応カードキーを渡しとくよ」
「カードキー?」
「はい、これ。扉を開ける鍵だよ」
僕はそう言って、ロロネアにカードを渡す。
「扉横の四角い部分にタッチして開錠するタイプね。扉はオートロックだから、閉める時は何もしなくていいよ」
「う、うむ……? 」
「大丈夫、あとで実際に見せるから。その前にあっちの説明だね」
よく分かっていない様子のロロネアにそう言って、僕は再び移動する。
向かう先は魔力生成パネルを並べた場所だ。
さっきから気になっているのか、ミルミーさんがチラチラ見てるんだよね。
バッテリーにも食い付いていたし、きっと魔道具に興味があるんだろう。
パネルが近付くと、一番に駆け出して行ってパネルの前に屈みこんだ。
「ほえー……!! これまた面白い魔道具……魔遊具? ですねー」
「視界には入っていたが、何なのかさっぱり見当がつかないな……」
「またとんでもない代物なんじゃない?」
屈みこんだミルミーさんの後ろで、ロロネアとレレノンさんが言う。
「その魔遊具は魔力生成パネル。名前の通り、魔力を生成できるパネルだよ」
「ええっ!!? 魔力を生成できるんですかっ!!?」
本日最大の声量を出すミルミーさん。
ロロネアとレレノンさんも、「「魔力を生成……?」」と声を揃える。
「うん。より正確に言えば、太陽の光エネルギーを魔力に変換している、かな」
「太陽の光エネルギー?」
「魔力に変換……ですか?」
ロロネアとミルミーさんが首を傾げる。
「うーん、なんていうかな……太陽の光に当たると熱が生まれるでしょ? 光にも力があるんだよ。ただ、そのままだと魔法には使えないから、魔力に変えてるってこと」
「ふむ……? よく分からんがすごいのだな」
「なるほど……! 光にそんな力が……」
「まあ、ざっくりと言えばだけど」
詳しいメカニズムを訊かれたら僕も分からない。
【遊者】の力でえいっ! と変換してるだけだし……
重要なのは、光にも間違いなくエネルギーがあるということ。
それから、ミルミーさんから「触ってもいいですか?」と言われたので、「どうぞどうぞ」と許可を出した。
やっぱり、3人の中で一番魔道具に関心があるみたいだね。
「ほえー……!」と目を輝かせながら、様々な角度から観察している。
ロロネアとレレノンさんもしばらく観察してたけど、満足したのか立ち上がった。
「よかったら、ジェットスライダーで遊んどく?」
「おお! ぜひ頼む!!」
「そうね、私も遊んでみたいわ」
先に遊んでおくか尋ねると頷いたので、一足先にジェットスライダーへと向かう。
一応、ミルミーさんにも聞いたところ、もう少しパネルを見てから行くとのこと。
ついでに転移ステーションも見ていいかと言われたので、「好きなだけどうぞ」と答えておいた。
「ミルミーさん、魔道具が好きなんだね」
「まあ、ミルミーはな……」
「あの子、“魔法オタク”だから」
「魔法オタク?」
「うむ。彼女は強力な魔法の使い手であると同時に、根っからの研究者だからな」
「魔力の効率的な使い方とか、いろいろと調べてるみたいよ」
ロロネアとレレノンさんが、笑いながら教えてくれる。
なるほど、魔力の効率的な使い方を……道理で魔力生成パネルに食い付くわけだ。
最初に感じた学者っぽさも、間違いじゃなかったんだね。
「時折、研究の一環でチェスターに行くこともあるくらいだからな」
「チェスターって、魔法国家の?」
「ああ。私は行ったことがないが、森霊族とは違った魔法理論があって面白いんだとさ」
「なるほど」
そういえば公園に来た時、チェスターと口にしていたような。
森霊族ってあまり他国に行かないイメージがあるけど、ミルミーさんは行動的なのかもしれない。
他の2人に比べると都会的な格好なのも、その辺が関係してるのかな。
そんなことを考えながら、2人をバッテリー扉の前に案内する。
「まずはジェットスライダーのスイッチをオンにしよう。ロロネア、さっき渡したカードキーを出して」
「うむ、これだな」
「うん。そしたら、それをそこの読み取り部分にタッチして――」
僕はロロネアに扉の開け閉めをレクチャーする。
「おおっ……! 本当にこのカードが鍵なのだなっ……!」
「オートロック? のシステムもすごいわね」
カードキー&オートロックの仕組みに目を見開く2人。
僕はロロネアに再び扉を開けてもらい、ジェットスライダーのスイッチを入れる。
「加速リングの光がついたぞ!」
「こんな感じで、使う時だけスイッチを入れる形になるからよろしく。スイッチを入れてる間は、バッテリーを消費しちゃうからさ」
僕はバッテリーに表示された数字を指さして言う。
「今のところは100%、つまり満タンってことね」
「そうそう。これが残り10%とかになったら、チャージしたほうがいいと思う」
「ふむ。ちなみにどれくらいで0%になるのだ?」
「たぶんだけど、上手く節約すれば数ヶ月くらい持つんじゃない?」
「数ヶ月っ!? このバッテリー1個でそんなに使えるのか!?」
「上手くいけばだけどね。早ければ数週間の可能性もあるし」
「数週間持つだけでもすごいと思うわ」
「うむ……」
感心して呟く2人の横で、僕はパンパンと手を叩いた。
「さて! 魔遊具の紹介も終わったことだし……」
「ジェットスライダーの時間だな!!」
食い気味だなぁ。
僕がコクリと頷いた直後、ロロネアは元気に駆け出していく。
「……ハマってるわね」
「はは……レレノンさんもぜひ」
ぼそりと零されたレレノンさんの言葉に、僕は苦笑しながら返すのだった。
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