第14話 魔石回収革命と魔力バッテリー

 翌日。


 今日は公園のほうへは行かず、森でのレベル上げと魔遊具作りに専念する。


 昨日浮上したジェットコースターの件については、ひとまず保留中だ。


 というのも、公園を作ることにしたのは元々そこがギャップになっていたからで、普通に木が生えている場所を開発するのとは事情が違う。


 

 一応、あの一帯はどの国にも属さない緩衝地帯みたいだけど、精霊の里からすればご近所だ。


 特に許可等が必要なかったとしても、里のほうに伺いは立てておきたかった。


 ロロネアが精霊様に聞いてくれるとのことなので、ジェットコースターの作製は返答が貰えるまで止めておく。


 ちなみに、ロロネアに言伝を頼んだ際、「リベルとこの公園のことを仲間に話してもいいか?」と言われたため、「問題ないよ」と答えておいた。


 里の外部に情報が漏れる可能性は低いし、遅かれ早かれ遊園地を作れば広まる情報だ。


 なんなら、もう他の森霊族には知られていると思ってたんだけど、ロロネアは律義に情報を秘匿してたみたいだ。


 まあそんなわけで、朝から森に出かけた僕は、倒したモンスターの魔石を拾いかけて手を止める。


「そうだった、魔石回収用の魔遊具……」


 昨日の早朝、そんな魔遊具があればなーとか考えていたっけ。


 ルティアの来訪で慌てて転移したこととか、公園でのあれこれが重なり、すっかり忘れてしまっていた。


「まずはそっちから作るかー」


 今日開発する予定だった魔遊具は他にあるんだけど、急遽予定を組み込むことに。


 魔石回収用の魔遊具ができれば、レベル上げの効率が上がるからね。


 僕は周囲の敵をモンスター見つける君で確認し、1匹残らず倒した後、クラフト台を生成する。


 昨日の時点で魔遊具のイメージは浮かんでるんだよね。


 レーザーガンとセットで使用する、銃タイプの魔遊具。


 モンスターの亡骸に光線を撃つと、その魔石をアイテム袋に転送するというものだ。


「――完成!」


 遠隔で転送する機能の組み込みがなかなか難しく、少し時間がかかったけど、満足のいく銃が完成する。


「うん、いい感じだね!」


 レーザーガンは黒色をベースにしているけど、その白色版という感じでかっこいい。


 これで問題なく使えれば、両手に銃を持つ二丁拳銃スタイルが実現するぞ。


 黒と白の二丁拳銃……厨二心を刺激する響きだ。


 まあ実際は片方のみで攻撃するわけだけど、かっこよければそれでいいじゃない。


「よし、試してみよう!」


 僕は疼く右腕を押さえながら、モンスター狩りを再開する。


 結果から言って、銃は狙い通りに効果を発揮した。


 レーザーガンで敵を仕留めた後、続けて撃つだけで魔石を転送してくれる。


「すごい! すごいぞ!」


 これまでも十分な速さで魔石を回収していたけど、それとは比にならないレベルで回収効率が良くなった。


 倒した相手に近付くという手間がないため、実にストレスフリーな環境だ。


 当然、モンスターを倒すペースも劇的に上がり、以前の2倍……いや3倍のスピードで探索が進んだ。



 ◆ ◆ ◆



「ふぅ……探索は一旦終わりかな」


 ぶっ通しで走り続けること数時間。


 さすがに少し疲れてきたので、小休憩の時間に入る。


 この数時間だけでも、これまでの計算でいう半日分は経験値を稼げたはずだ。


 僕は走っていた足を止め、2つの銃をアイテム袋にしまう。


 あ、余談だけど、白い銃の名前は“コレクターガン”に決まった。


 コレクターというのは、魔石の“回収”から取っている。


「さてと、また魔遊具作りの時間だね」


 倒木を椅子代わりに小休憩を取った僕は、大きく伸びをしながら言う。


 元々、レベル上げをした後は魔遊具を開発する予定だったからね。


 休憩を取った場所はちょうど作業に向いたスペースがあったので、そのままここで始めることにする。


 これから開発するのは、魔力供給源を確保するための魔遊具。


 昨日気付かされた、常時発動型魔遊具の問題点への対策だ。


 一般的な魔道具では魔石を供給源にしているけど、【遊者】の僕のやり方は一味違う。


 昨晩から今朝にかけて時折考えていたので、なんとなくアイディアは出てるんだよね。


 そのアイディアというのが、“魔力バッテリー”の作製。


 名前の通り魔力を蓄えるための魔遊具で、使い方は前世のバッテリーと同じである。


 魔石を嵌めるのと何が違うの? と思うかもしれないけど、これが結構違うのだ。


 まず、魔石をそのまま使う場合、魔石によって大きさのバラつきが出てしまう。


 そのため、一般的な魔道具の魔石入れは余裕を持って大きなスペースを確保するか、ぴったりサイズに削った魔石を嵌めるやり方を採っている。


 それならば、魔石の魔力を魔力バッテリーに移動させ、必要な度にチャージしたほうが楽でいい。


 バッテリーなら蓄積可能な魔力量の上限も分かるので、物によって魔力量が異なる魔石より管理しやすいし。


 というわけで、魔力バッテリーを作ることに決めた僕は、さっそくクラフト台上でホログラムを作っていく。


 形は……前世でもよくあったボックス型でいいかな。


 どうせ魔遊具ごとにバッテリーの形は変えるし、まずはベースの基本形からだ。


 で、次に蓄積可能な魔力量についてだけど、これはなるべく多くしておきたい。


 アイテムボックスに使ったような、空間拡張を応用すればいけるかな。


 それと、バッテリーの魔力残量を把握できる機能も欲しいよね。


 気付いたらバッテリー切れでしたという事態はなるべく避けたい。

 

「あー、でもそうか。バッテリー切れでも魔力供給は止まらないんだ」

 

 各魔遊具は製作者の僕と魔力的に繋がっているから、バッテリーが切れた後は自動的に僕から供給されるはず。


 うーん……でもそれってどうなんだろう?


 もしバッテリーのみで十分な魔力量が供給できるのなら、繋がりをなくしてしまってもいい気がする。


 もちろん、レーザーガンみたいな魔遊具はこれまで通りに使うけど、常時発動型の魔遊具達はバッテリー専用でもいいよね。


 あ、さすがにアイテムボックスは据え置きでいいと思うけど。


「ふふ……アイディアが止まらない」


 やっぱり物作りは最高だ。


【遊者】の能力を貰えて良かった。


 僕は女神様に感謝しながら、ホログラムを完成させる。


 気分が乗っていたこともあり、最後まで集中して設計できた。


「よし」


 僕はテストのため、魔力バッテリーを実体化させる。


 それから、バッテリーを取り付けるための魔遊具を適当に作製した。


 魔力の力で光る魔動ライトスタンドだ。


 僕から魔力が供給されると意味がないので、ライトスタンドとの間にある魔力的繋がりも切っておかなきゃね。


 一瞬、繋がりが切れなかったらどうしようと思ったけど、切り離すようイメージしたらちゃんと切れてくれた。


「――おお! ちゃんと光ってる!」


 ライトスタンドに魔力バッテリーを嵌め込んだ直後、ぱっと明るい光が灯る。


 モンスター見つける君を装着して見てみると、バッテリーからランプに魔力が流れる様子がはっきり分かる。


「魔力の流れも問題ないね。そうだ……」


 僕はその様子を観察しながらふと気付く。


「バッテリーの魔力は有限だし、スイッチを付けたほうがいいかもね」


 オンオフのためのスイッチ。


 前世の家電では当たりの仕組みだったし、この世界の魔道具の中にもスイッチ付きの物はある。


 これまでは意識してなかったけど、バッテリー節約のためには欠かせない。


 今度ジェットスライダーにバッテリーを取り付ける予定だけど、その時に併せてスイッチのシステムも組み込もう。

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