第5話 新しい魔遊具達
異世界に遊園地を作る。
我ながら素晴らしい目標だが、その道のりは中々に険しそうだ。
まずは基礎的な部分として、魔力量を増やしたい。
巨大アトラクションの作製と維持には、大量の魔力が必要だろうからね。
「と言っても、やることは変わらないんだけど」
日々の魔遊具開発と、モンスター討伐によるレベル上げ。
それらを繰り返すことで、自ずと【遊者】の能力は磨かれる。
「そうだ、モンスターを見つけるための魔遊具を作っておこうか」
これまでの森の探索では、襲ってきたモンスターを迎撃するスタイルをとっていた。
だけど、効率的にレベルを上げるには、こちらからモンスターを狩ったほうがいい。
今は自室に1人なので、さっそく専用の魔遊具を作ることにした。
「――できたぞ!」
黙々とクラフトを続けること1時間。
いい感じの魔遊具が完成する。
この2年でクラフトに慣れたこともあり、思ったよりも早く終わった。
「名前は……“モンスター見つける君”でいいか」
モンスター見つける君は、
レンズ部分が青みを帯びていて、装着すると中々にかっこいい。
「よしよし。ちゃんと作動してるね」
装着状態で机の上に置いた魔石を見る。
青いフィルターがかかった視界の中、魔石部分にだけ赤い光が灯っている。
サーモグラフィーで温かい物を映した時みたいな感じだ。
魔石由来の魔力を感知してくれるので、モンスターの姿もしっかりと映してくれるはず。
これさえ装着しておけば、視界の悪い森の中でも索敵が楽ちんだね。
翌日、モンスター見つける君を実際に使ってみたところ、思惑通りに役立ってくれた。
かなり遠くの範囲まで感知してくれるので、モンスターを見逃すこともない。
そうして、モンスターを狩ること2週間余り。
順調にレベルアップする中で、僕は次なる魔遊具の開発に着手する。
初の試みとなる、乗り物タイプの魔遊具だ。
現状、探索を行う際は徒歩での移動となっている。
スピードシューズもあることだし、モンスターを倒す目的ならそれもいいんだけど、1日の移動距離には限界がある。
近々、禁域の外周部分――遊園地建設の候補エリアを下見したいと思っているので、
「――よし、ここら辺かな」
僕はいつものように庭を出ると、森には入らずに横方向に移動する。
しばらく進んだ先にあったのは、直線的に開けた平地のスペースだ。
木々の死角になって屋敷からも見えないし、魔遊具の試運転にちょうどいい。
「乗り物……やっぱりバイクかな」
異世界の地で乗るバイクってロマンがあるよね。
そう結論付けた僕は、しばらくクラフト作業に集中する。
バイク自体は1時間ほどで出来たけれど、どうせならデザインにもこだわりたい。
さらに1時間以上を費やして、かっこいいデザインに仕上げていく。
「おお! かっこいい!」
結果的に生まれたのは、どこかSF要素を感じるバイク。
はやる気持ちの中で試乗してみると、乗り心地も中々いい。
魔力を元に稼働するため、エンジン音は鳴らないが、静かに颯爽と走るバイクもそれはそれでかっこいい。
「……はっ! こんなことをしてる場合じゃ!」
バイクの運転が楽しくて、ついつい乗りすぎてしまった。
この魔動バイクはまだまだ完成品ではない。
平地を走る時には申し分ないけれど、森の中等を進む時には不便だからだ。
ならどうするのかって?
“空飛ぶバイク”にすればいい。
ここは魔法のある異世界で、僕の能力は実質何でもアリの【遊者】。
夢のような空飛ぶバイクだって作れる。
「ふふ……ワクワクが止まらない」
午後からは屋敷での予定があったため、この日のクラフトは一度中断したが、翌日もバイクの改良に精を出す。
「どうせならフォルムチェンジさせよう」
ただ飛ぶだけでは芸がないので、飛行時は変形するようにする。
タイヤ部分が本体に織り込まれ、側面からジェット機のような翼が生える形だ。
結局この日も2時間以上を費やして、念願の空飛ぶバイクが完成した。
命名は“ジェットバイク”。
ジェットというのは、飛行形態のジェット機モードから取っている。
“魔動ジェットバイク”にするか迷ったけど、長いので魔動は省略した。
魔力で動くという意味では、全部の魔遊具が魔動だしね。
「よし、これで移動手段も確保できたぞ」
禁域の下見に行く際は、存分に活躍してくれるだろう。
ジェットバイクを1度アイテムポーチに仕舞った僕は、そのままの足で森へと向かう。
そこでもう1度バイクを取り出し、しばらく森の上空を飛行してみたが、想像以上に快適な空の運転が可能だった。
直感的に細かい操作が可能なので、空を飛ぶモンスター等と戦う時にも使えそうだ。
ひとしきり空の運転を楽しんだ僕は、そのまま森へと降りて日課のモンスター狩りを始めるのだった。
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