第3話「政略結婚と愛する人」




結婚式のあと、私は寝室のバルコニーで寛いでいた。


おこちゃま第二王子は、ベッドでぐっすりねむっている。


王家の力を安定させるため、第二王子の成人を待たずして結婚式が執り行われた。


第二王子との婚約から半年、やつは私の良い傀儡人形として働いてくれている。


このまま良い子でいてくれるなら、世継ぎを授かったあとも傀儡として生かしておいてやってもいい。


「全てが終わったわ。一緒に祝杯を上げましょう」


私は近衛兵の一人を呼びつけた。


私が学園に通っていた時の執事だ。


権力で近衛兵にねじ込んだのだ。


世継ぎは、王太子となったおこちゃま第二王子との間に作る。


私が王家に嫁いだ目的の一つだから、これはくつがえせない。


でもやつに愛まで与える気はない。


「あなたは恐ろしいお方ですね」


彼は私の顔を見て苦笑いを浮かべた。


彼は幼い頃、前世の記憶をたどる取り戻しパニックになっていた私を、恐れず、否定せず、受け入れてくれた。


だから、私は今日まで正気を保ってこられたのだ。


「あなたの存在がそうさせたのよ」


ゲームのシナリオどおりに破滅して修道院に送られたら、彼と会えなくなってしまう。


身分の差があるから彼と結婚できない。それは分かってる。


公爵家に生まれたのだから、政略で他の男と結婚しなくてはいけない。それも分かってる。


その二つは耐えられる。


だが彼と会えなくなるのだけは耐えられなかった。


「強欲で残酷な私は嫌い?」


グラスにワインを注ぎ彼に渡す。


「いいえ、そんなあなただから愛しています」


彼はグラスを受け取り、私の手の甲に口付けを落とした。


私は全てを手に入れた。


富も権力も愛する人も。


ゲームのヒロイン的にはバッドエンドだが、私にとってはこれがハッピーエンドだ。




――終わり――





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【完結】「悪役令嬢に転生しましたが、本編終了まではヒロインの邪魔をいたしません」 まほりろ @tukumosawa

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