最終話「機械仕掛けのフェアリー・ハート」

 傷口からは、青紫色の液体が流れだしている。

「デ、デリーズさんっ……」

 マイキーが口をぱくぱく動かして、口から液体を流し、涙を流しながら片手を力なくデリーズに伸ばした。しかし、その手は触れあうことなく。


 デリーズは、彼の手を冷たく払いのけた。

「マイキー、ご苦労。フェアリー・ハートは、俺が有難く使ってやる。強大な力を手に入れる為にな。貴様は、俺の糧になり、迷わず地獄に逝け!!!」


 何とデリーズは、マイキーの胸に手を伸ばすと指を突っ込み、宝石を探り当てた。

 そして、一気にマイキーから引きちぎり、液体が付いた琥珀色の宝石を手にした。

 マイキーは絶命し、その場に倒れ伏した。


「やった、やったぞ。とうとう。フェアリー・ハートを手に入れた!まさか、俺のAIが持っていたとは。灯台下暗とうだいもとくらしだった!」


「しかし……こんなちっぽけな宝石だったとはな」


 マイキーを殺めた。デリーズは、最早人間とは思えない。表情をしていた。

「自分のAIを殺しやがった!あんなに慕ってた奴を」

 ソラは、ギリッと歯ぎしりをした。


 ミランダは声も出せずに涙を流して、絶句している。

『あんたなんか、人じゃないっ!』

 アリスの怒声が響く。

「さあ、小僧。この世に別れは出来たか!」


 デリーズは、フェアリー・ハートを頭上にかかげた。

「さあ、フェアリー・ハート!俺を圧倒的な力を持つ、支配者にしろ!」


 フェアリー・ハートは、その声に呼応するようにキラキラと光り始めた。

「くそっ、デリーズ!」

 ソラ達は悔しそうな表情を浮かべながら見ている。


 その時、砂の奥から巨大なデザートゲイターが砂を巻き上げ現れ、

 デリーズを宝石ごと、一瞬にして噛み砕いて呑み込んでしまった。


 静寂、ソラ達は何とも、言えない悲しみと後味の悪い感情を残して戦いを終えた。





 その後、戦いの傷を癒したソラは、アリスと共に冒険者ギルドでガンマンの鍛錬をしている。

 ミランダは語り部の里に戻り、復興するために尽力し始めた。



 彼女の傍らには、ロボット工学の博士により、復活したマイキーが寄り添っていた。

 機械仕掛けのフェアリー・ハート。ソラとアリスが共にいる限り、それは正しい煌めきを失わないだろう。




 ~fin~



 最後までお読み頂いてありがとうございます。

 この作品には、SFコレクションに完全版があります。

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【カクヨムコン版】機械仕掛けのフェアリー・ハート 夢月みつき @ca8000k

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