第62話
キャンディスがホワイト宮殿に戻ればまたアルチュールやジャンヌ、エヴァとローズと共に過ごすことができることを喜んでいた。
そして懐かしさを感じながらもアルチュールのふわふわの頭を撫でる。
次の日、アルチュールのと久しぶりの朝食を食べながら、いつもの食事を食べてホッとしていた。
シェフたちも変わらないメンバーで、再び会えたことを喜んだ。
最近はバイオレット宮殿の一室で一人で食事をしていたので、いつものメンバーでいられるとなんだか安心する。
(そういえば今日、お父様から呼び出されているとエヴァに言われたんだったわ。昨日も会ったはずなのに何の用かしら……)
ホワイト宮殿に戻った途端の呼び出しにキャンディスは怯えていた。
皇帝からの呼び出しに遅れるわけにはいかないが、キャンディスとアルチュールは足早に書庫に向かう。
もちろんリュカに御礼を言うためだ。
扉の外にいる護衛はリュカがいる時にだけ立っている。
そしてアルチュールとキャンディスを見て、すぐに扉を開けてくれた。
書庫に入るといつもの定位置で本を読んでいるリュカの姿があった。
「リュカお兄様、いらっしゃいますか?」
「アルチュール、キャンディス!」
「……リュカお兄様っ!」
アルチュールが嬉しそうにリュカの元に行ったのを、キャンディスはジェラシーを感じつつ見つめていた。
(わたくしにしか懐いていなかったアルチュールがリュカお兄様に……っ!?)
ギリギリと響くキャンディスの歯軋り。
するとリュカはキャンディスに気づいたのか、安心したような表情を浮かべている。
「キャンディス、大変だったみたいだね」
「……っ!」
「キャンディス?」
嫉妬心剥き出しのキャンディスだったが、リュカの言葉にハッとする。
「……は、はい!たまたま居合わせた皇帝陛下がわたくしを救ってくださいましたわ」
「話を聞いてとても驚いたんだ。元気そうでよかった」
リュカは以前よりもずっとハキハキと話しているような気がした。
それを不思議に思っていたがアルチュールと話していくうちに、だんだんと話すことに慣れていったらしい。
リュカは微笑みながらアルチュールの頭を撫でている。
それを見ているとキャンディスはなんだかルイーズにヴァロンタンを取られた時みたいにムッとした気持ちになる。
なんだか悔しくなって、キャンディスもアルチュールに抱きつくと、リュカは微笑みながらキャンディスと距離を取るようにアルチュールから離れてしまう。
(アルチュールは渡しませんわよ!)
アルチュールはキャンディスに抱きしめられたことで嬉しそうだ。
しかしキャンディスは本来の目的を思い出す。
「リュカお兄様、わたくしがいない間、アルチュールの面倒を見てくださりありがとうございました」
「い、いや……別に僕は何もしていないよ」
「ジャンヌから聞きましたわ。リュカお兄様のおかげだと」
キャンディスがそう言うと、リュカは照れているのか頬を赤らめてモジモジとしている。
今日もリュカが座っていた場所には大量の本が積み重なっていた。
(リュカお兄様のことだから毒物を学んでいるのかしら?)
リュカといえば部屋に引きこもって、ひたすら毒物の研究をしていたイメージしかない。
しかし本を見ると明らかに植物の本ではないことに気づく。
キャンディスはリュカが何の本かが気になり、問いかけて見ることにした。
「リュカお兄様は、いつもここで何を学んでいらっしゃるの?」
「ぼっ、僕!?」
「はい。リュカお兄様ですわ」
「僕は……僕は人を救えるようになりたくて医学書や人体図鑑を見てるんだ」
「え……?」
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