2.形あるものは、いつかは脆く壊れるというけれど

第二章プロローグ

 梅雨も明けて夏休みも見えてきた頃、いよいよ文化祭についての話し合いが始まった。


「えーっと、先生的には折角クラスに咲洲さんと早川さんが居るので演劇とかいいかなって思うんだけど……」


 上坂先生モードで陽子ちゃんはそう言う。


「あの時のこと忘れたなかったんだ」


 私と唯は苦笑いを浮かべていた。


「それだと折角二人がいるのに、触れ合えないじゃないですか。だったら、メイド喫茶とかいいと思うんですけど」


 クラス委員長がそういうと「まあ、そうですけど……」と、上坂先生は尻込む。


「多数決でいいんじゃないですか?」


 そう提案したのがまさかの私自身で、クラス中は驚いていた。


「ほら、私って、色々あって体育祭とかも見学だったし、皆んなと何かするの初めてだから……自分の得意分野よりもう少し違うところで何かやりたいなって」


「じゃあメイド喫茶でいいでしょ」


 隣の美夜子がそう言うと、クラス中も納得していた。


「いやでも、他に何かしたいものとかないの?」


 私がそう問うと、誰も返事しなかった。


「あれ? 私って嫌われてる?」


 そう言うと今度は一斉に「そんなことないよ!」と言われた。

 結局、多数決を取ってみても、メイド喫茶で揺らぐことなく決が出た。

 役割の振り分けで、真っ先に私が給仕役になった。


「ええ……労働は……」


「私もやるし、いいでしょ?」


 唯は立候補してそう言った。


「スケジュール合わせなさいよ?」


「わかってるって」


 私は美夜子を見たが、美夜子はあまりやりたくなさそうだったので、裏方に回るようにお願いした。


「でもちょっと美夜子のメイド姿、見たかったな」


「あ、わかる!美夜子なら絶対可愛くなるのに」


「嫌よ。目立ちたくないし」


 私は唯を制して「目立つことは私達で十分だから」と言った。

 それから話はトントンと決まって、役割分担なども決定して夏休みに入った。


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