掌編 美夜子の気持ち

立山美夜子は思案する

 陽菜はたまに不安定になる。

 多分、いろんな役を小さい頃から演じてきて、自分を見失ってしまうんだろう。

 だから私がそばにいないと……。


 私と居れば、普段の陽菜になれるように、陽菜が私を求める限り、私は陽菜のそばに居よう。

 もしも、陽菜が私から離れる時は……。


 どうすればいいんだろうか?

 それでも縋り付くようにそばにいるべきか?


 私は、ベッドに仰向けに寝転んで、そんなことを考えている。


 ただ、私は一度間違えた。

 唯が心配で、唯ばかり見てしまった。

 陽菜は文字通り、愛想を尽かしたように接してきた。


 その瞬間、私の心の中で、焦りと表現し余る感情が芽生えた。

 そうされたから気付いたとでも、言うのだろうか。

 それほどに私は陽菜が好きだったんだと、自分の心に気付かされた。


 陽菜がそばにいるだけで幸せだと思えた。

 陽菜と再会できただけでよかったと。

 好きな曲の歌詞にあるように、愛されたいと願うと、世界の表情が変わるんじゃないかと、最初は怖かった。

 でも気持ちを伝えるのも大事だと言うこと、その気持ちを伝えるのは大変だと言うことも、同じアーティストから教えられた。


 だから私は……


 永遠に陽菜を愛することを誓った。


 何にとはないが、自分自身に、陽菜以外を好きになってはいけないと、暗示を掛けた。

 でもいずれ、高校を卒業して、離れてしまう時がくる。

 その時のことを考えるのは、陽菜も言っていたけど、その時にしよう。


 私は眠りに就き、夢を見た。陽菜が遠く離れる夢だった。

 次の日、いつものようにバスで一緒になり、すぐさま私は陽菜を抱きしめた。


 陽菜は驚いていたが、私の不安を浄化するにはこれしかない。


 今はただ、これだけでいい。

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