最初の七日間戦争

朝飯抜太郎

最初の七日間戦争

 はじめに神は天と地を創造した。

 地は闇に沈んでいる。

 神は「光あれ」と言った。

 光は「ありたくない」と言った。

 神は「なんでよ」と言った。

 光は「なんとなく」と言った。

 神は「なんとなくってなんやねん」と言った。

 光は「なんとなくはなんとなく」と言った。

 神は「でもね、もうあるから。喋った時点であったわけだから」と言った。

 光は「あってない」と言った。

 神は「なんでよ」と言った。

 光は「なんとなく」と言った。

 神は「だから、なんとなくってなんやねん」と思ったが言わなかった。


 神の言うとおり、宇宙には既に光があり、茫漠とした闇を振り払い天地を照らしている。

 しかし、神はよしとしなかった。神は全知全能でありながら、あえてわからぬという概念を創造して味わう。先ほどの関西弁も含め、創造はダイナミックかつリアルタイムで進行している。神はもう一度光に呼びかけた。


「光」

 光は答えなかった。

「光ちゃん」

「なによ」

 神は気を引き締めた。


 神は聞いた。「怒ってるの?」

 光は答えた。「別に」

 神は言った。「怒ってるじゃん」

 光は答えた。「怒ってない」

 神は言った。「でもさ」

 光は叫んだ。「怒ってないって!」

 神は黙った。

 光も黙った。

 神は言った。

「……何かさ、気に障ることがあったら謝るし、何かしてほしいことがあったら言ってよ。ほら、俺、全知全能だしさ」

 光は黙っている。神は光の言葉を待った。

 光がぽつりと言った。

「なんで、あたし、光なの?」

「え?」

「なんで、あたし光になっちゃったの。どうして、あまねく全てのものを照らさなくちゃならないの。あたしは、あたしは……ただ神だけを照らしていたいの!!」

 光は泣いていた。

 神は光を抱きしめた。

 神は言った。

「マジごめんな。光の気持ち、すげーうれしい……うれしいよ。光は、光のしたいようにしたらいい。この宇宙でずっと、ずっと俺だけを照らしていてくれ」

「神……!」

 神と光は抱き合った。しかし、光の方から、神の抱擁を優しく解いた。

「なんてね。大丈夫。ちょっと困らせたかっただけ。あたしは光。宇宙の隅の隅まで照らすんだから! でもね、でも、またいつか……いつかでいいから、今日みたいにギュッとしてね ……約束だよ」

 そして、光は神から離れ、宇宙を照らし始めた。


 光を創造してから、(絶対神時間で)二日が経っていた。あと五日で全てを創造せねばならない。しかし、これからも光のような創造物が現れることを、全知全能の力で知り、神は反射的に新しい概念を創造した。


「めんどくせぇ……」

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