フェチズムみみっく! 学校一の美少女に身体(物理)目当てで言い寄られています……肝臓フェチってどういうことですか。
第19話 生徒指導部ってそういう仕事なんだろうなって思ってはいるけどムカつくものはムカつく
第19話 生徒指導部ってそういう仕事なんだろうなって思ってはいるけどムカつくものはムカつく
「阿志賀、ちょっと良いか」
放課後。
文化祭の準備をしながら擬態の練習をしていた俺を呼びに来たのは担任兼顧問の吉見先生ではなく、生徒指導部の体育教師だった。
野球部の鬼顧問と名高い体育教師は不機嫌そうな表情を隠そうともせずに俺を呼びつける。その後ろには体育科の女性教師もいたりして、物々しい雰囲気である。
「何すか?」
「ついてこい」
有無を言わさぬ様子に思わず優愛やひかりと顔を見合わせるが、無視するわけにもいかないのでついていく。
「内蔵さんは私とです」
付き添いらしい教師に優愛も呼ばれ、なんだか不穏な空気のまま歩き続ける。
案内されたのは体育教官室前に衝立を置いて作られた簡易の面談スペースだった。
進路指導とか、後は何かやらかした時くらいしか使われないそこに足を踏み入れるのは当然初めての経験である。
優愛も少し離れたところだが、似たようなスペースに招かれていた。
机を挟んで座ったところで、体育教師がクリアファイルを差し出してきた。
中に入っていたのは宛先や送り元が黒塗りにされたメールの本文だ。
『当校の生徒に脚を触られた。高校生にもなれば悪戯では済まない。立派な性犯罪だ』
脅しのような文言から始まったメール文は、要約すると「ウチの学校の生徒に絡まれて無理やり足を撫でられた。同じ中学の内蔵優愛と一緒にいた。ダイスケと呼ばれていた。学校で指導しないなら訴える」というものだった。
「おととい、学校に届いてな。何か心当たりはないか?」
「ないっす」
「お前が脚に並々ならぬ関心を抱いてるのはみんな知ってるぞ?」
「男子の大半は女子に並々ならぬ関心を抱いてますが、全員性犯罪者として扱いますか?」
「屁理屈を言うんじゃない! 今は阿志賀の話をしてるんだ!」
いや、屁理屈いってんのはお前だろ。
話の通じなそうな体育教師の態度に、気持ちが一気に冷める。
「何もしてないっす。優愛と一緒っていうなら、向こうもそう証言してくれると思いますよ」
「じゃあ何でこんなメールがウチに届くんだ?」
「送った人に聞いてもらえませんか?」
「何だその口の利き方は!」
口調の話なんぞしてねぇよバカ。頭の中に筋肉すら詰まってなさそうな対応に閉口してしまう。
通り魔が出たら刺された人間に理由を訊ね、ガン患者がいればどうしてガンになったのか問い詰めるんだろうか。頭が悪すぎる。
おまけに思い通りにならないと怒鳴るとか今時小学生ですらもうちょっと自制心あるぞ。
「俺は脚が好きです。だからこそ姑息な犯罪はしません」
「……どういう意味だ?」
頭の固い体育教師にも分かるように説明するのって苦行すぎる……いや、脚の啓蒙だと思おう。こうやって徳を積んでこそ脚への悟りが開けるんだ。
そう思い込んでできるだけ丁寧に説明する。
「脚は座り、立ち、歩き、走るための器官です。日常の中の自然な躍動感こそ美しいので、無理やり触る意味がわかりません」
妙な表情で俺を見つめる体育教師。理解しているのかしていないのか微妙なので説明を重ねようとしたが、それどころではなかった。
「大輔くんはそんなことする人じゃありませんっ!」
悲鳴にも似た優愛の大声が廊下に響いたからだ。
「確かに大輔くんは脚大好きだし基本的に脚しか見てないしちょっと……いえ、かなり変態だと思います!」
おい、大声で何言ってんだ優愛。
味方のふりして背中から刺そうとするんじゃない。
「でもそんなことをする人じゃありません! そこに脚がなくても妄想でトリップできる人なんですよ!? 脚が視界に入ってれば満足なのに無理やり触るなんてことするはずないでしょう!?」
優愛につられたのか、女性教諭の怒鳴り声も聞こえた。売り言葉に買い言葉というか、優愛の態度につられて興奮してしまったっぽい。
互いにヒートアップしてもう何言ってるか分からないレベルでの怒鳴り合いになっている。
優愛と女性教諭のキレっぷりに思わず体育教師と顔を見合わせてしまう。俺らもこんな感じだったんか……と確認しているようでもあった。
……っと、いかんな。
優愛の暴走を止めないと。
大きく息を吸い、俺も声を張り上げる。
「脚を無理やり触る痴漢が出没したら女子はズボン履いたりして自衛するでしょ! そしたら俺は日課の脚眺めすらできなくなるわけですよ! そんなもったいないことしません! そもそもパソコンとスマホの中にある脚フォルダで満足してますから!」
あ、優愛と女性教諭の怒鳴り合いが止まった。
体育教師もこのままだとまずいと察してくれたのか、大声でわざとらしく確認する。
「じゃあこのメールは心当たりないんだな? 仮に警察沙汰になっても問題ないって言えるな!?」
「言えます! 脚フォルダも脚なので18禁画像はありません!」
「なら良し! 呼び出してすまなかった! 疑ってるんじゃなくて確認したかっただけなんだ!」
いや嘘つけ。
おもわずジト目になるが、優愛たちを止めることには成功したので良しとする。
「済まなかった。前任校の不良共を思い出してアツくなったが、確認したかっただけなのは事実だ」
「了解っす。自分も態度悪くてすみませんでした」
「いや、いきなり疑われたらそうなる。済まなかった」
良い感じにまとまって面談スペースを出れば、目を赤くした優愛がいた。
「……泣いたのか?」
「別に。泣いてないです」
絶対泣いただろコレ。
何でか笑ってしまい、優愛を余計に怒らせた。
でも体育教師につっつかれたり不審なメールで呼び出された怒りは、いつの間にか綺麗さっぱり消えていた。
フェチズムみみっく! 学校一の美少女に身体(物理)目当てで言い寄られています……肝臓フェチってどういうことですか。 吉武 止少 @yoshitake0777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。フェチズムみみっく! 学校一の美少女に身体(物理)目当てで言い寄られています……肝臓フェチってどういうことですか。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます