第11話~ライデンフロスト現象~
「戦争はいずれ訪れるだろう」
一国の姫君はそう言った。
「だけど……国同士の世界大戦じゃなく、悪魔や天使を含む異種族との戦争だ」
ソラは何を言っているのか分からない。悪魔や天使などは想像上の生物だからである。
「何を言っているんだ? 悪魔? 天使? 異種族? いるわけがないだろう?」
「いや、いる」
「いるわけがない。エビデンスを出せ」
「じゃあ、何で、ラプラスが悪魔を信仰していたの?」
「そういうやつらは洗脳されている。まともな人間なら、討論の際、政治と宗教の話はしない」
「そう。本物を見たことがないのね」
後ろから声がした。またもや、騎士であった。身長は女性にしては高く、髪は結んでいない。髪の色が、頭の上の方は赤色で、その下から紫色という髪が痛む色をしている。
「誰っすか?」
「彼女は」
姫君が答え始めた。
「元ノラギア情報部のトップで、現第一騎士団の『十傑』の中の一人」
続けて
「ヘルステア・リーザナス」
と言った。
「そもそも、十傑って何だ?」
「十傑とは、第一騎士団の、ソラの大好きな『エンジ』、『オリビア』、そこの『リーザナス』、『リズ』、『アーシャ』、『カノア』、『ナターシャ』、『サチ』、『メイ』、『マロエ』の十人のことだ」
「ほぼ聞いたことねえな」
「聞いたことがあるもないもそれは人の自由だ。私は尊重するよ」
あ、初めて声聞いた。
「ありがとうございます、リ……」
その直後、放送が鳴った。
『緊急! 緊急避難! 生命の危機が脅かされています! 直ちに避難を開始してください!』
なぜだ? そう思った。
「なぜなんだ」
すると、向こう側から、軍団が攻めてくるのが見えた。
「誰だ?」
見てみると、馬に乗っている。
「馬?」
一人の女性が叫んだ。
「魔王軍!」
その直後、女性の首元は無かった。
「よく来たねぇ、君たち。お出迎えをわざわざありがとう」
嘲笑気味に笑うのは、金髪碧眼でマントを来ており、オールバックの男で、その犬歯が特徴的だ。
「な……⁉ ヴァンパイア⁉」
『ヴァンパイア』。民話や伝説などに登場する存在で、血液を吸って栄養源とする魔物だ。でも、おかしいぞ? 記憶が正しければ昼には出ないはずだが。
「ピンポーン! さすが騎士さん、当たりだよー」
「私の名に置いて、無礼は許されない」
空気を読めない子供かの如く、ソラは割って入った。
「あのさ、ヴァンパイアって昼間に出るんすか?」
エンジもヴァンパイアも目を丸くし、しばらく見つめあった。
「おかしなことなど何も言ってはいない! 素晴らしい! 素晴らしいぞ、小僧!」
「おかしなこと言ってるわけがないだろう。知識はどんなに要らないものでも使えるのさ!」
そうしている間に、十傑らしき人物が現れた。たぶんそうだろう。
最初は、罵声から始まる。
「おい、魔王軍! お前らは存在してはいけない存在だ!」
紫色の髪の毛で、天然パーマとは思えないほど盛り上がっている。背中にはうさぎの人形を常備している。
「ほう。もはや貴様ら騎士ですら、太刀打ちできないほどまでに成長しているのにか?」
「やってみろよ!」
「そちらがその気であれば、俺らも行くぞ」
綺麗な円を描き、こう言った。「フローズン・ドロップ」と。
「何を…バカ……な…………」
エンジが木端微塵に粉砕された。その瞬間、ソラは時が止まったかのようだった。
「どうして…………あんなに強かったはずなのに……!」
原型をとどめていないエンジは微かに
「…………きろ…………まにかか…………」
「生きろ。あとは、お前にかかっている」と言った。
ソラは鬼のような形相をしていた。
「てめえ……ヴァンパイアだかインスパイアだか知らねえが、あんまり図に乗るなよ?」
「ん? 何だ? 急にやる気か?」
後ろの方から声が聞こえた。「おーい、一般人。一般人が戦っても勝てるわけないじゃん?」「諦めろ」など散々だ。だが、ソラのプライドだけは許さなかった。
「いつもいつもずーっとエンジさんのことを考えていたのに……てめえ!」
姫君も現場に到着した。
そして、ソラは誓った。「お前だけは絶対に殺してやる」と。
異世界東大生 八雲真中 @Ryukyu_KohaKu
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