第25話 クリスマス

 クリスマス。


 クリスマス商法で稼ぎたい民衆は多かった。

 かった、のだ。

 過去系だ。

 もうすでに国民のほとんどが中立国に逃げていった。

 流失した国民を抑えることができなかった。

 破綻した経済を立て直すことも、新政権としての条約も、国民のいなくなったこの国ではなんの役にも立たなかったのだ。

「わたしは、なんのために戦ってきたのだろう」

「平和のためだよ。これからも政権を立て直さないと」

 エメラルドが青い顔をして、書類をまとめていた。

 平和になるのなら、と信じてきたわたしだが、これではなんの成果も得られなかったのと同じではないか。

「国民に怒りの炎を灯してしまった」

 限界ギリギリまで、抑え込んでいた軍もクーデターを起こし、残り少ない国民はデモ活動にいそしむ。

「大丈夫だよ。ルビー。大丈夫」

「エメラルド……」

 たくさんの人を犠牲にしてきた結果がこれか。

 鼻で笑うことすら許されぬ所業。

 自分がこれまで何をしてきたのか、ようやく分かった。


 もう、長くはない。


 ならわたしは……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

壊れた世界の中で ~アドベントカレンダー2023~ 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ