第3話

「あの、どこかで会いました?」

そう聞いてきた彼女を見て、僕は思わず息を呑んだ。

「い、いえ、人違いだと思いますけど...。」

「そうですか...。」

「なんか、すいません...」

そう言って僕は歩き始めた。心臓はまだドキドキしたまま。僕は少し汗をかいていた。こんなこと、生まれて初めてだった。

突然、腕を掴まれた。慌てて振り返ると彼女がいた。

「やっぱり、会ったことありますよね。」

「いや、ないです...きっと...。僕、行きますね。じゃあ。」

僕が行こうとしても彼女は決して手を離さない。その力は女性とは思えないほど強かった。

「何するんですか。離してください。」

僕がそういうと、彼女は思いっきり僕を突き飛ばした。

「痛っ」

「あなたは私がそう言っても離してくれませんでしたよね。私がどれほど怖かったことか。あなたも同じ目にあわせてあげる。」

そういうと彼女は僕に覆い被さった。彼女の体はどんどん重くなる。助けて、と言いたいが声が出ない。息ができない。苦しい。

「大丈夫ですか!」

誰か来てくれたらしい。助かった。僕は安心してそのまま意識を失った。

気がつくと病院にいた。僕はため息をついた。ここまでか...。

翌日、僕はテレビに出た。コメンテーターが何か言っている。

「やっぱり罪悪感に襲われて、恐ろしくなったんでしょうね。」

...違うな。罪悪感なんて毛頭ない。ただ、自分が殺した相手に殺されるなんて格好悪すぎる。刑務所なら守ってくれる。死ぬことはない。そう思ったから自首したのに...やっぱり殺しすぎたみたいだ。

僕は連続殺人事件の犯人として死刑判決を受けた。...まあ、死に方としてはまだマシだ。

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