第13話 賭け

  ◆ 


「あの子はしてない。見た目で判断しないで」


 いつにもまして、美月は強情だった。私はなかば呆れながら答えた。


「見た目とかじゃなくて、同じ高校だった子がで退学処分になったって言ってたんだから、確定じゃん」


「どうせ、それもその高校で広まっていた噂でしょ?」


「まあ、そうだけど」


 だんだん私は美月に苛立ち始めた。彼氏との関係が上手くいっていなかったということもあり、心に余裕が無く、些細なことでもすぐにかっとなった。


「そんなに言うなら、賭けようよ。負けたほうが罰ゲームね?言われたことをなんでもする」


 私の提案に美月は怯んだ。


「そういう話しじゃなくて……」


「どうしたの?負けるのが怖いの?――なんだ。美月もやっぱりこっち側じゃん」


 私が意地悪く追い込むと、美月は下唇をぎゅっと噛んだ。


「どうする?やめておく?」


「いい。やる。私はあの子、信じてるから」


 美月はゆっくりと低い声でそう答えた。


「信じるって、現実をないことじゃなくない?」

 

「だから、まだ確定した話じゃないでしょ!?」


 吐き捨てるようにそう言うと、美月は踵を返し、部屋を出ていこうとした。


「ねえ……――私の弟にちょっかい出すのもういい加減やめてくれない?」


 私の言葉に美月が立ち止まる。


「弟も迷惑してるから」


 美月の全身が一瞬、ぴくりと震えた。しかし何も言わず、そのまま私の部屋を出ていった。

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