2番目の殺人
7
そんな日常を繰り返す中で
五年——私は約五年間で幼虫から
私は組織の枠組みの中で自分の立場を見つけることが得意でした。少年院で培った礼儀と根気。耐え忍ぶ心、そして忠誠。少年院で過ごした約三年間、刑務官という絶対的存在は私の道標でした。
それは
平成二十九年 五月二日
私はいつものように通院から帰り、
『ねえ、ちょっといいかな』
前田くんはいつもの白いカッターシャツにアーガイル柄のカーディガン、ベージュのチノパンとなんだか軽いコーディネートです。実のところ、私のファッション知識は前田くんから得たものが全てだと言っても過言ではありません。
『どうしたの。なんだか嬉しそうだね』
私が言えば、前田くんは声を落とすようにジェスチャーしたあと顔を寄せてきました。
『合コンだよ、合コン。女子大生と二対二のさ』
『女子大生……』
『浅倉くん合コンとか行ったことないでしょ? 僕がいろいろご教示してあげるから一緒に行かない? もちろん食事代は全部僕が持つし、焼肉だよ?』
ご教示してあげる、とはなんとも変な日本語で、相変わらず少しモヤッとする言い回しではあったけれど、確かに私は合コンには一度も行ったことがなく興味がありました。
『うん。いいよ』
『よかった。実は一緒に行くはずだったやつに断られちゃってさ。女の子は二人で来るし、困っていたんだ』
前田くんはキャメル色のリュックからスマホを取り出すと、SNSのアプリを立ち上げて画面を私に見せます。
『今日来るのはこのユリって子と、それからこっちのリリって子。二人とも十九歳。僕はユリちゃんといい感じだから、浅倉くんはリリちゃんの相手をお願いね。そうそう、合コンでは僕のことはキヨって呼ぶように頼むよ。僕も浅倉くんのことはジュンって呼ぶから』
前田くんのスマホの画面に映し出されていたのは簡単なプロフィール文と、目元だけがわかるようにポーズを取ったユリって子の顔写真。リリという子に至っては、何かのキャラクターの女の子をアイコンに設定しているようで顔は分かりません。
『……前田くんは元々、この子達と知り合いなんだよね』
『もちろん。ユリちゃんとはDMでやり取りして二ヶ月くらい経つし、リリちゃんはユリちゃんの一番仲の良い相互だから』
『相互?』
『お互いをフォローし合っているってこと。僕はユリちゃんと二人きりでもいい、って言ったんだけど、ユリちゃんが浅倉くんに会いたいっていうから』
『え、ユリって子は僕のこと知ってるの?』
『え? ああ……なんとなく話の流れで、きみのことを喋ったことがあってさ』
たぶん。前田くんは自分のことを私を救ったヒーローかなんかだと思っている節があって、おそらく周りにもそのように風潮していることが予想されました。今回も女の子たちにはそういった類で話をしたのでしょう。
顔も知らない、素性も知らない、そんな男女が待ち合わせて出会う。私はそれを出会い系サイトだと揶揄しましたが、前田くんは頑なに否定しました。
『ほら、これはあくまで異業種交流会だから。ちなみに僕は医者、きみは介護ヘルパーってことになってる』
『前田くん、確かお父さんの病院では事務員やってるって』
『事務
『それは別に名刺を渡せば』
『あ、ダメダメ!
そういうと、前田くんは軽い足取りで出て行ってしまいました。
この頃の前田くんは私と再開した時の雰囲気とは随分かけ離れていて、崇拝しているはずの
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