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「なるほどなるほど。
私は変わらず
二時間九分。宗胤と会話を始めて、まもなく一時間が経とうとしている。
「それで、
「白々しいですよ。こんな情報、既に織り込み済みでしょう」
「わたくしが既知かどうかはこの際問題ではありません。この会話はあくまで、浅倉さんの人生の振り返りでございますので」
状況に納得はしていない。しかし今は宗胤の言う通りに私は私の人生を振り返り、その中で宗胤の目的を探るより他に手がなかった。
そして今、私はひとつの気づきを得る。
「
宗胤は眉毛を上げ、いけすかない顔で音の鳴らない拍手を数回打った。
「その調子ですよ、浅倉さん。
「そんな話をしているんじゃないです。そもそも
「浅倉さんが会員である事実を知っていたのは
宗胤の態度に、私は思い切りため息をつく。
「いいかげんにしてください。いちいちそのとぼけた調子が癪に障るんですよ。あなたいったい私から何を聞き出したいんですか? こんな回りくどいことしなくても分かることならさっさと教えますから、いい加減このやり取りやめましょうよ、時間の無駄だ」
その時。宗胤はズイと上半身を乗り出して顔を寄せると、私の胸ぐらをひねるようにして掴み上げた。その鼻頭はぴくぴく痙攣しており、かろうじて口角は上がっているものの目に光はない。
「……さっきから無駄だとか中止しろだとか、お前にそんなことを選ぶ自由なんてねえよ。犯罪者がカステラ食わせてもらって紅茶啜って、一瞬でも人間に戻れた気になったか? あ? 意見してんじゃねえ。覚悟も捨てちまえ。お前の死に時は俺が決めるんだよ」
豹変した宗胤の顔を見て、私の記憶は揺さぶられた。会ったことがあるのか? ならば何故、私はこの男の顔を思い出せないのだろう。
「喋りな。そして考えろ。あと二時間、お前は俺が何をしたいのか理解できないままモヤモヤして過ごせ。お前に出来ることはそれだけだ」
宗胤は私の胸元を突き離すと、何故か自身の襟首を正した。それは乱れた心を落ちつかせるように、焦る気持ちを隠しているように私には見えた。
目を瞑り、唇を窄めて長く息を吐いた宗胤は、肩の凝りをほぐすように数回腕を回すと目を開け、そして微笑む。
「さてと。えっと、どこからでしたでしょうか。あ、そうそう
「嫌だと言ったら?」
「あなたが守り続けたものを、力尽くで破壊する」
宗胤は取り乱しはしなかった。私は言われた通りに考える。宗胤の策に乗り、このまま語り続けることで私に不利益が生まれることはまずあり得ない。
おそらく宗胤は私の
あと二時間一分。
耐え忍べば、私の勝ちだ。
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