僕が君の幸せになれるように……。
「わん!! ご主人様。
「……よし、私で最後だね!! これでお泊まり会のメンバー全員が無事お参り出来たよ」
「天音、参拝の列に並ぶ順番が遅くなって悪かったな」
「
「天音、残り物って冷えたごはんのことかな?」
「あははっ、オリザちゃんは今年も色気よりも食い気かな。まあ健康なわんこの証拠でよろしい!! 天音と後で境内に出ている屋台で食べ歩きしようか?」
「わ~い!! みんなでおいしい物を食べ歩きしたい。わん♡」
僕たちは元旦早々、近所にある
それは久里留神社が犬を祭ってある関係で境内に犬や猫のペットを連れてきても大丈夫なところだ。動物好きな人には口コミで広まっているらしい。
確かにリードを着けて直接地面を歩かしたりは出来ないが、お散歩カートに愛犬を乗せて境内を移動している参拝客も多く見受けられる。
……まあ、僕とオリザみたいな特殊なケースは他には絶対に存在しないだろうけど。
日の出と共に広くはない境内にも参拝客の姿が増えてきた。鳥居のむこう側に見える駐車場の入り口も車で渋滞し始めている。早く出かけてきたのは正解だったのかもしれない。
……今回は僕を初詣に誘ってくれた
「おおい、宣人よ。ひとりで何をにやにや笑ってんだよ。あっ、お前もしかして思いだし笑いしてんな。未亜ちゃんとずっといっしょに行動してたし。……ふ~んそういうことかよ。悪いな、俺は気がまわらなくて」
やっぱり
あれっ、そういえば祐二が女の子と付き合っているとか親友の僕でも聞いたことがないぞ。十六年間恋人いない歴更新中の僕と違って、学校でも非公認ファンクラブが複数存在するほど女の子からモテるのに……。
「……僕が女の子に奥手な陰キャだって誰よりも知っているのは祐二、お前だろ!! 人のことよりたまには自分の恋愛話でも聞かせろよ」
「おっ宣人、逆ギレかよ。俺は惚れた腫れたとかで大騒ぎすんのとっくに飽きてんだわ」
「くっそおおおっ、そんなせりふ言ってみてぇ……!! そっか、だから祐二は恋の相談役ばかり買って出るんだな。なんか合点がいったよ」
「何だよ宣人。逆ギレしたかと思ったら急に冷静になってさ。ははっ、元日早々おかしな奴だな」
自分の捨てぜりふを口火にして、こちらが突っかかってくるとばかりに身構えていた祐二。僕の冷静な態度に少し拍子抜けした様子だった。
オリザの護衛のために派手な刺繍の入ったスカジャンをはおって、昭和時代のヤンキーばりな格好をしていても、彼の相好を崩した笑顔を見せられるだけでそれ以上何も言えなくなる。いい意味で祐二は人たらしの才能があるよな。
「祐二お兄ちゃんもそれくらいにしておいて。宣人さんをいじめないの!!」
「
「その話題がダメなの!! せっかく
「はっ……!? 香菜、お前の言っている意味がまったくわかんねえ」
「鈍感なふたりにはわからなくて結構です!!」
ええっ!? 香菜ちゃん。なんて僕も祐二の巻き添えなの……!!
そういえば未亜ちゃんの姿が見あたらないな。僕といっしょにお参りを済ませた後、どこに行ってしまったんだろう?
大鳥居から一歩出て表通りを見回してみる。三が日だけ初詣の参拝需要にむけて、沿道の屋台やお店も早朝から営業している。混雑した人混みの中に彼女の姿があった。僕が貸したマフラーをまだ首に巻いてくれているのか。
「……お~い未亜ちゃん!! そこで何をしているの?」
「宣人お兄さん、ちょっとこっちに来て手を貸してくれませんか」
僕の呼びかけに彼女はすぐ気がついたようだ。んっ、胸の前に何かを抱えているぞ。その場を後にして未亜ちゃんのもとに駆け寄った。
「その両手に抱えた段ボール箱の中身は何なの?」
「これは甘酒です。今日は特に冷え込みが厳しいから温かい飲み物があればと思って」
「言ってくれればいっしょに僕も付き合ったのに。それにお泊まり会の全員分を用意してくれたみたいだね」
「私にはこんなことしかお礼出来ませんから気にしないでください。ほら宣人お兄さん、おしるこもありますから甘いものが好きなオリザさんに渡してくださいね」
「……未亜ちゃん、ありがとう」
自分なりに精一杯の感謝を表したいのだろう。今回の初詣で真っ先に願いを叶えてあげたいのは彼女だ。神様が本当にいるとしたらその想いが届くといいのに……。
「じゃあ、みんなのところにはやく戻ろうか」
「はいっ!!」
段ボールで出来た箱に入れられた飲み物を彼女から引き受けて抱えた瞬間。不意に背後から声を掛けられた。
「…ちょっと教えてもらいたいんですけど。あの鳥居のむこうにいる白い犬耳付きフードを被った女の子はお兄さんたちのお知り合いですか?」
誰だ、この人は。オリザのことを言っているのか……!?
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