ねえ、ご主人様。嬉しすぎて思わず漏れちゃいそうなんです!!
「おい
僕のたったひとりの親友である
「……祐二、本当に悪いと思っているんだ。こんな時刻に呼び出していきなり相談を持ちかけてもかなりの迷惑だよな」
「ああ、大迷惑だよ。宣人がどうしても相談したいことがあるってメールをよこしたから、てっきり恋愛の悩みだと早合点しちまって大騒ぎしていた俺の立場はどうなる? 可愛い妹の前で兄貴の
「……
「香菜うっせえよ、お前は黙ってろ。俺と宣人は男同士の大事な話し合いをしている最中だぞ。……まあいいや、とりあえず宣人の部屋に上がらせてくれよ。この寒空の中、お前の家までスクーターでかっ飛ばしてきたから身体が芯まで冷え切ってるんだ。ああ寒っ!!」
祐二のやつ、妹である香菜ちゃんの的確なつっこみに兄貴としての
「わりいけど宣人、部屋に上がるのより先にまずはトイレに行かせてくれ。冷えすぎておしっこを漏らしちゃいそうだぜ!!」
「もうっ汚いな!! 兄貴ったら子供じゃないんだから……」
「裕二、トイレは母屋に続く渡り廊下にあるから早く行って来いよ」
「おっ、サンキュー!! じゃあ先に話を進めておいてくれよ。香菜、お前は書記係りをしっかりとな」
「兄貴こそしっかりと手を洗うんだよ。衛生観念が適当だとオリザさんもいるんだから戻って来ても絶対にお部屋に入れないから!!」
兄妹で掛け合い漫才をやっているのはなにも僕たちだけじゃないんだな。ふたりの仲の良いやり取りを横で眺めながらとても微笑ましい気持ちになった。
我が家の庭にある個室部屋は僕が前に使用していた物よりはるかに室内の広さがある。ふつうの子供部屋は六畳間が多いが、新しくオリザと暮らし始めたこの個室部屋は室内面積で約倍以上の広さを誇っていた。妹の天音が手狭な自分の部屋からお泊まり会のグレードアップをもくろんで、虎視眈々と個室部屋の使用権を狙っていたのもそんな魅力のせいだろう。
医者である親父の書斎兼仕事場として建てられた個室部屋。その関係で以前はかなりの蔵書が置かれておりあまり広さを感じなかった。荷物をすべて運び出したがらんどうの室内を見てひとりで住むにはちょっと広すぎるな。そんな感想を覚えたことをいまさら思い出していた。親父の意図は最初からこの部屋で僕をお世話係としてオリザと一緒に住まわせる腹つもりだったんたな。
「宣人お兄ちゃん、まだなの? 祐二先輩との立ち話が長すぎるんだけど。早くこっちに来ないとオリザがお兄ちゃんのベッドですやすや眠っちゃうよ!!」
おいおい待てよ。室内には未亜ちゃんも同席しているんだぞ。いくらオリザが我が家に同居している経緯を説明したからといってもそれはまずいだろう……。
「クウウ~ン。オリザとっても眠いの。ブタさんのぬいぐるみと一緒におねんねする……」
「ちょ!? オリザ、いつのまにぬいぐるみを抱いて寝てるんだ!!」
「天音がぬいぐるみを治してやったの。オリザが口で噛み噛みしても簡単には破れない生地を使ってみたんだ。万が一取れたパーツを飲んじゃったりしないから安全なんだよ」
「相変わらず天音は気が利く上に行動が早いな。僕なんかとは大違いだ……」
「そんなことないよ。今回の宣人お兄ちゃんはいつもとは全然違って見えたよ。オリザのことをみんなにちゃんと理解してもらえるように一生懸命に努力していたから……」
それは決して僕だけの手柄じゃない。天音のアシストがあったから荒唐無稽な今回のいきさつをみんなに理解してもらえたんだ。
「……オリザさん、もうすっかり眠っちゃいましたよ」
僕たち兄妹が会話のやり取りをしている背後からそっと声を掛けられた。振り返りながら部屋のベッドに視線をむけるとすでに深い眠りの国へと旅だっている白い子犬の姿があった。
「はしゃぎすぎてきっと疲れちゃったんですね」
ベッドの傍らに寄り添う未亜ちゃんがオリザの寝顔を眺めている。
「……本当にオリザさんって子犬みたいに可愛いな。ブタさんのぬいぐるみをしっかりと腕に抱いたまま寝息をたてるなんて。……あっ私、間違えましたね。彼女は自分のことを本当の子犬だって心から信じているんだから」
「……未亜ちゃん、君も僕の話を信用してくれたんだね。本当に嬉しいよ」
「天音ちゃんのお兄さんが話す態度を見ていれば、絶対に嘘をついてはいないってわかりますから」
「でも未亜ちゃん、その後の話は本当に大丈夫だったの? もしも僕の言動に落ち度があったなら謝るよ」
「お兄さんはなにも責任を感じることはありませんよ。あの場でみっともなく取り乱してしまった私がいけなかったんです……」
彼女は先ほどの行動を恥じている様子だっだ。だけど未亜ちゃんがすべて悪いんじゃない。あれは話の流れで不可抗力だったんだから。
僕は庭で起こった一連の出来事を思い返してみた。
*******
「みんな、僕の話を聞いてくれ!! 頼む……」
満月の下、いつもより明るく照らし出される庭の置き石に深い陰影が刻まれる。決意を固めてしまえば後はあっけないくらい言葉が次々に自分の口から発せられた。立て板に水とはあのときの僕の状態を言うんだろう。
「一方的に今回の経緯を君たちに話してしまってごめんね。天音が補足してくれた話も含めて絶対に嘘はついていないことはわかって欲しい……」
オリザについて知っているすべてを告白した僕の顔を、さしむかいに立つ未亜ちゃんと香菜ちゃんはただ黙って見守ってくれていた。
「……オリザさんが私と同じ女子校に通っていたころの状態じゃないのは理解しました。天音ちゃんのお兄さんが嘘をついていないのも信じます」
「そうだよ!! 香菜も未亜先輩と同じ意見だから。それにどんな事情がオリザさんにあったのかはわからないけど、みんなで協力して彼女を守ってあげるべきじゃない」
「二人ともありがとうね。オリザの境遇を理解してくれただけじゃなく、私たち兄妹に協力まで申し出てくれるなんて……。嬉しすぎて泣いちゃいそうなんだけど」
天音には本当にいい友だちがいるんだな。僕はオリザを中心にして輪になっている女の子たちの後ろ姿をみてとても暖かい気持ちになった。
「わんわん!! こんなにたくさんのおともだちが増えちゃったよ。ど、どうしよう!? 嬉しすぎてくるくるしたくなっちゃった……」
「きゃあ、オリザさん、いきなりどうしたの!!」
オリザの様子が何だか変だ。その場で立ったままくるくると自分の身体を激しく旋回運動し始めている。これはもしかして子犬が嬉ションでもする前の体勢なのか!?
だ、だめだ。S級美少女な女子高生がお庭でお漏らしをしちゃうなんて……。
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