判断

どうしよっかな……。



突然だが、私は時の精霊である。

精霊は、一つの国につき、二人、または一人存在する。

精霊というのは、生まれる前に神様から祝福を受けた者のことを指す。

時の精霊は、色々なものの時を止めたり、進めたりすることができる。

勿論、生物の時だって。

まあ、それ以外は普通の人だ。


悪用すれば大量虐殺もできてしまう、その強すぎる力のため、精霊の持っている力によって使える範囲が違う。

普通の精霊だと、力が足りなくて、時を操ることが十分にできないため、時の精霊はハズレの精霊などと言われるが、私は時を十分すぎるほど操ることができる。

しかし、これだけは絶対。

『生物を殺してはいけない。』

これは掟である。この掟を破ったら、地獄行きだ。

なぜ殺してはいけないのかというと、世界に生きる人の人数というのは決まっているからだ。

人が一人死んだら、また一人生まれ、また一人死んだら……。と繰り返されているのだ。

精霊が一人殺してしまうと、世界に存在する人間の人数が狂ってしまう。

ただ、精霊が一人殺すことを想定されていたならば、別だ。

まあ、想定されていたとしても、精霊が人を殺すことは禁じられている。

……そう、死にそうな人も、助けてはいけない。



そう考えると、普通に探した方がいいかもしれない。

もし、悠太がこの後交通事故で死ぬとすれば、私が助けると、私が規則を破った罰として、神界で処刑されるかもしれない。

でも、絶対時の力を使って時をとめ、悠太を探した方が早いだろう。


「他人を助ければ、自分に返ってくるのよ?」


お母さんの言葉を思い出した。

何度も何度も言われている言葉。

私はその言葉を思い出し、溜息をついて、時の力を使う。


まだ、悠太が交通事故で死ぬとは限らない。


私は時が止まった街を走り回り、悠太を探す。

悠太が行きそうな場所を美希に教えてもらっている。

その場所を重点的に探していく。


もう12箇所は回っただろうか。


信号を渡ろうとしている悠太と、青と赤を見間違えていそうなトラックの運転手を見つけた。


見つけた瞬間、私は絶望した。

悠太を助ければ、人間界の時が止まり、私は神界で裁判され、処刑になるだろう。

処刑されれば、何らかの死因で私は死んだことにされる。

美希は悠太が戻ってきて喜ぶだろう。けど、もしかしたら私が死んだことで、悲しむかもしれない。お母さんも悲しむだろう。悲しむというか、起こるかもしれない。


悠太を助けなければ?

悠太を助けなければ、やっぱり美希は悲しむ。

お母さんは別に何も思わない。あ、でも親同士でも交流があるから、お母さんも少しは悲しむかもしれない。


……やっぱり放っておこうかな。

放っておけば、悠太は死ぬ。

私だって、精霊といえど、中身は普通の人だ。

自分は死にたくないし、自分が一番可愛い。

それが人間というもので、私もそう。

私が時の力を解こうとした時、何かに解くことをやめさせられた。

そして、頭の中に、



『待って。ーー助けてあげて。』



と、気のせいかもしれないが、声が聞こえた。

女神様……の、声かもしれない。

私は眉間に皺を寄せ、何分も何分も悩んだ。

悩んだ、というか、葛藤したと言った方がいいのだろうか。



そして、長い溜息をつき、


「仕方ない。助けてあげますか。」


と呟いた。

私は、止まっている悠太を持ち上げる。

そして、美希がいるはずの場所に悠太を運ぶ。

休憩しながらも1時間運び続けると、美希がいる場所にたどり着く。

そこに悠太を置いた。


ちなみに、人の持ち運びも、罰は軽いが、規則で禁じられている。

罪が軽いと言っても、人の生死に関しての罰則よりかは、であり、まあほぼ終身刑のようなものである。


そして私は、時の力を解除した。

これは、何にも拒まれなかった。

その瞬間、場所が変わり、景色が裁判所に変わった。


私は周りを見渡し、

最高裁判官(?)をみる。

今から裁判が行われるらしい。

(※主は全然裁判のことを知りません。現実の裁判とは全く異なりますので、ご了承ください。)



「ゴホン。では、裁判を始める。まず、この時の精霊がやったことを簡単に説明しよう。

こやつは、親友の弟である悠太という男児を助けた。本当ならばこの男児は死ぬはずだった男児であり、その男児の代わりにこの時の精霊を殺すということになっている。反対意見のあるものはおるか?」



誰も手をあげない。

私の反論タイム。

と言っても、反論できることなど一ミリたりともない。


そうして裁判が終わり、判決が下されようとした時、裁判官の一人が最高裁判官に耳打ちをした。


最高裁判官は驚き、少し悩む素振りを見せた後、


「女神様から、その子に悠太を助けろと言ったのは自分であり、全責任は自分にある。また、死ぬ者は代わりに用意した。安心しろ。と伝えられた。よって、判決は無罪である。

……時の精霊よ。人助けは悪いことではない。しかし、今回は良かったが、人の数が狂って仕舞えば、この世界は壊れてしまう。これだけは覚えていてくれ。」


と言った。

まさかの結果で、私は無実。

女神様には感謝である。

女神様に創造してもらった恩に加え、今日助けてもらった恩も加わってしまった。

どうしたものかと悩みながらも、こつこつ返していくしかないと諦めた。

私は溜息をつき、次の瞬間、元の景色に戻り、人間界の時間がスタートした。

悠太と美希は感動の再会をはたし、(と言っても、どうして僕ここにいるんだろう見たいなテンションだったけど。)今回の事件は幕が降りた。

私はもう一度溜息をついた。

美希が、


「遥。遥が連れてきてくれたの?ありがとね!家きてよ。くるでしょ?おやつあるよ!」


と私に迫ってくる。

私はハイハイと返事をしながらも、この平穏ができる限り長く続くよう願った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


第一章終わりです。

はやっ!って思う方もいると思いますが、こういう物語なんです、はい。

自分で見てみても、展開はっや、何がどうしてこうなったん!?

みたいになっていて、ちょっと焦って、というか、もう自分で自分に呆れております。

今回の章……なんと約3700文字!あーやばいですねー。

一話で3700だったらまあわかる。だけど、章単位で3700……初心者なのであんまりわかりませんが、少ないですね〜、はい。


こんな感じの小説になりますが、面白いなーと思ってくれた方は、次更新されたら読んでいただけると嬉しいです!

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時間の精霊の禁断 ユリ @corisu

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