二章 感傷の雨
自然と涙が溢れる。
茜色に焼ける空の下、濡れたコンクリートを歩いている。
まだ湿っぽいレインコートを抱えて。
今朝はまだ、どしゃ降りだった。
風も強かった。だからレインコートを着て、壁に行った。
一日も欠かしたことなんてない。
どんな予定があったって、私は絶対壁に行って、背中をぺたりとつける。
そこで、毎日話しかける。
今日あった楽しかった出来事。たわいない世間話。
壁の向こうのあなたに向けて。
でもいくら話しかけたって、返事が返ってくることなんてない。
向こうの世界、あなたはもう死んでしまったかもしれない。
もう二度と、あなたからの返事は聞けないかもしれない。
それでも、諦めたくなかった。
辛くたって、あなたがいれば、あなたが笑ってくれば、それでいいのに。
「私、馬鹿みたい」
呟いた一言が、空に吸い込まれるように消えた。
ため息を一つ。
嫌だなんてもがいたって、あなたが戻ってくることはないのに。
いつも思っていた。
私もあなたも、いつか壊れてしまう。
でも、きっと二人なら、壊れても直すことができるなって。
あなたがいなくなっちゃったら、私が壊れた時、どうすればいいの?
ぽつりぽつりと降り出した雨。
雨に混じった涙が、コンクリートを再び濡らす。
鼻をすすり、レインコートをぎゅっと抱えて、家まで走った。
家についた頃、私はびしょ濡れだった。
そのままお風呂に入って、ご飯も食べずに寝た。
布団を被って、一生懸命目を瞑った。
なのに、あなたは瞑った瞼の裏側から笑顔で手を振る。
忘れさせてくれない。
そのまま、目を瞑り続けた私は、気づかぬ間に眠ってしまったらしい。
次目が覚めた時、もう空はすでに明るかった。
昨日の雨が嘘みたいなくらいの晴天だった。
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