【詩】ただの僕

紫波すい

ただの僕


 もうどうでもいい、って君が泣くから

 もうどうでもいい、って思ってたけど

 仮初かりそめの美しさを説く

 君に生きていてもらいたい、ただの僕


 朝陽が窓を叩いても

 自分の体温から抜け出したくなくて

 昨日つまずいた無機質な言葉は

 9時間、現実逃避してもまだ耳元だ


 生きていく

 生かされていく


 桜が散るのを他人事とは思えなくて

 向日葵が上を向くのに嫉妬して

 秋桜が先取りする終わりにふるえて

 淡々と、針を動かす

 「お祝い」の腕時計がこわくて、外した


 僕はひとりだ

 独りになんてなれないことが

 僕を尚更、ひとりにする


 僕たちは、ひとりと、ひとりだった


 そんなことないよ、って僕が笑っても

 そんなことあるよ、って君は泣くから

 嘘、嘘、本当と積み重ねてく

 君と手を繋いでいたい、ただの僕


 双子みたいな傷跡は見せないから

 双子みたいな台詞も肯定するから


 この気持ちの正体は分からない、

 分からない、分からないけど


 またね、って僕が手を振ると

 さよなら、って君も手を振る

 黙々と遠ざかっていく、君と


 君と明日、また会いたい、ただの僕

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【詩】ただの僕 紫波すい @shiba_sui

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