第3話 逆行凡人VS天才勇者2
10年先の記憶と、10年先の知識がある。
どうやら肉体は学生に戻ってしまったけれど、探索者としての技は忘れていなようだ。
だから、未来の俺の技が使える。
身体の脱力と同時に、爆発的な速度で踏み込む。
それは肉体と重心操作の極致。
極東の地にて『縮地』と呼ばれるモノ。
十数メートルを瞬時に移動する技を以て、俺は神代ナギに剣を振り下ろした。
***
挫折をしたことはあるか?
自分が得意だと思ってた分野で、さらにすごい奴を見つけたことは?
埋めようもない才能の差を感じた経験は?
こいつだけには絶対に勝てないと思ったことは?
______それらの後に押し寄せる、感情の味を覚えているか?
まあ、大抵の人間は知っているモノだ。
ソレを噛み締めて人は育つから。
.........話を戻そう。
挫折も、才能の差も、絶望さえも、俺の場合は神代ナギに教え込まれた。勘違いのしようもない程の圧倒的な格の違い。
将来的には一人で世界を救うような奴なのだから、まあ相手が悪いと納得するしかないと今でも思う。
だが、欲が出た。
もう一度戦えると考えて欲が出た。
10年前の俺は手も足も出なかったが、10年先の記憶を持った俺なら、マシな勝負ができるんじゃないか?
淡い希望なのは理解っている。
神代ナギは天才だ。
俺の全てを容易く上回る怪物だ。
だからこそ、俺は全力で神代ナギに挑んでみたい。
10年先の俺が身につけた『縮地』とその勢いを利用した剣の一撃。
自慢じゃないが学生程度では反応すらできない、現状放てる最速の攻撃だ。
だが、奴は容易く対応してくるだろう。
それでいい。
それでこそ全力をぶつける甲斐がある。
よし、腹は決まった。
さあ聖剣遣い、お前の才能を見せてみろ。
俺は全力でそれを乗り越えてみせる______!!
『勝負あり、勝負ありです!』
「______は?」
実況の声に、我に返る。
気が付けばコロシアムが妙な静寂に包まれていた。
なんだ? この一瞬でいったいなにが起こった?
観客の視線は、おれの足元に集まっているようだった。
俺は嫌な予感がして、静かに下を向いた。
なんということでしょう。
透き通るような白髪の美少年が、気を失って転がっているではありませんか。
『..................えー、それでは神代ナギ選手が続行不能のため、勝者は河見レンジロウ! です、はい』
客席が阿鼻叫喚に包まれた。
ファンが頭を抱えて絶叫し、一般観客は現実が受け入れられず呆然と立ち尽くし、試合で賭けをしていた学生が大番狂わせで怒号と悲鳴を上げている。
控えめに言って地獄である。
俺は、人生で初めて神代ナギに勝利した。
過去に戻ったのでダンジョン配信者になって人生をやり直す 赤雑魚 @jhon
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