俺のやりたいこと(本編無関係)

〜これは、悠真が東雲と戦う数日前の話〜

 


突然だが俺にはやりたくて仕方がないことがある。

 ヒントは、アニメや漫画で刀を使ってるキャラがよくやってる物理法則を無視したあの技だ。


 そう。正解は、刀を鞘にしまった瞬間に相手が切れるあの技のことだ。

 


 というわけで、俺は今ダンジョンにいる。

 異世界にいた時からやりたかったあの技をするためである。

 異世界にいた時はそんなことして遊んでる暇なんかなかったからな。


 そんな話は置いといて、あの技を成功させるために俺がすべきことはだいたい考えてきた。

 一つ目は、『相手を切るために空刃を使う』。

 二つ目は、『空刃で相手が切れるタイミングで納刀をする』。

 この二つを完璧にすれば、漫画やアニメでしか見たことがないあれを再現できるはずだ。


  空刃とは、異世界の技術のことだ。

 刀を振り、そこから出た風圧に魔力を乗せることで遠距離から相手を切る。

 これだけ聞くと強そうだが、実際は全く実戦向きじゃない。

 まず、風圧に魔力を乗せるなんて普通の騎士が戦闘中にできるようなことじゃないし、何より威力が足りない。

 

 だが、俺が使えばある程度の敵なら倒すことが出来る。

 だから今回は、この技術を使ってあの技を再現しようと思う。


 

 話は変わるが、昔から俺はこの技をやりたくて仕方がなかった。

 だが、人の能力では絶対に到達できないと知ってからは半分諦めていた。

 

 しかし、異世界に行って刀を極め出してからはあの技の再現が現実的になり、その欲は再び俺の中に芽生えた。


 だから俺は、今日という日のために何回も脳内シュミレーションをしてきた。

 その成果を発揮し、憧れの技を成功させるのだ。



 まず1人目の犠牲者は第20階層フロアボス、ミノタウロス君だ。


 俺が姿を見せるとミノタウロス君はすぐに襲ってきた。


『グオォォォォ!!!』


 距離はおよそ六十メートル。今俺が空刃をして相手が切れたら、流石に不自然に思われる距離だ。

 せめて十メートル、いや五メートルくらいまでは近づいてもらわないと困る。


 ミノタウロスは俺を獲物として認識し、そのまま突進してくる。

 そして、俺はミノタウロスまでの距離が二十メートルくらいになったタイミングで、ものすごい遅さで空刃を使った。

 このタイミングで出せば、五メートルくらいの時にちょうどミノタウロスの首に当たるはずだ。


 俺はミノタウロスに背を向けてゆっくりと刀を鞘にしまう。

 そして最後に刀をキンッ、と鳴らして入れきると、その音が鳴ったのとほぼ同じタイミングでミノタウロスの首は地面に落ちた。


 距離は四メートル、完璧だ。


「よっしゃあぁぁぁぁぁ!!!」


 その瞬間、俺は柄にもなく叫んだ。


 その後にも何回か違う敵で試してみたが、どの敵でも成功した。


 こうして俺は、長年の夢を叶えられたのだった。

 


 





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る