第23話 配信出演
中野に改めてお礼をしてもらった俺は、その後も以前よりは視線を感じたが、そこそこ普通の生活を送れるようになっていた。
だが、平穏というのは簡単に崩れ去るものだ。
そう、この瞬間のように………。
———————————————————
「天神、すまないが中野の配信に出てくれないか?」
「はい?」
中野にお礼をされてからの俺は、視線はまだ感じるものの普通に生活できるくらいには注目されなくなった。
それこそ、麗奈や華恋と遊びに行けるくらいには。
だが、このギルドマスターとかいう人は今俺の平穏を崩しかねない発言をした。
「配信って、あの画面に話しかけるやつですよね」
「まぁ、そんな感じだ」
「それって、全世界に発信されるんですよね」
「そうなるな」
「じゃあ、俺も画面に映るんですよね」
「あぁ、そうだ」
この人は何を言ってるのだろうか。もう一度配信に出る?そんなことをしたら……。
「そんなことしたら!また注目されるに決まってるじゃないですか!!!」
「それは……すまないと思っている。だが、これが最善策なんだ」
「理由を聞いても?」
「今やお前は世界的にも注目されてる冒険者だ」
「え?世界?」
「あぁそうだ。S級ですら苦戦するフェンリルをあぁも易々と倒したんだ。そうなるだろう」
「はぁ……」
「それで、世界中のギルドや一般市民からお前の情報をよこせよこせとうるさいんだ」
「はい……」
「このまま放っておくと、ここまで来てお前に直接会いに来る可能性も高い」
「それは……困りますね」
「そうだろう?だからもう一度中野の配信に出て、少しでもいいから素性を明かして欲しいんだ」
「なるほど……」
「分かってくれたか?」
「はい、分かりました。でも、なんで中野の配信なんですか?」
「あぁそれはな、お前も見知った顔の方がやりやすいと思ったからだ」
「なるほど……、分かりました。日程とかは決まってますか?」
「まだだ。決まり次第やる内容と共に報告する」
「はい。それでは俺はこれで」
「あぁ、分かった」
そう言って、俺はさっきまでいたギルドマスター室を出る。
まさか、もう会わないだろうと思ってから二週間もただずに中野と再会することになるとは。
やはり、フラグとは回収するためだけにあるようだ。
そんなことは置いといて、配信ねぇ……。
俺にうまくできるだろうか?まぁ、できないと思ってもやることには変わらないのであまり関係ないが。
それでも、やはり気の持ちようは変わってくる。
帰ったら中野の配信を見て勉強しよう。少なくとも中野の評判を落とさない程度には配信を理解しとかないとな。
そう思った俺は、来たるべきその日に備え、配信の勉強をするのだった。
—————————————————
「皆様こんにちは、なずかの配信の時間です」
”待ってました〜!”
”事件以来初の配信!”
”大丈夫だった?”
「はい、体にも特に異常などはありませんでした」
”良かった……”
”なずちゃんがフェンリルに襲われた時は絶望したからね”
”そういえば、あの助けてくれた人はどうなったの?”
”今日は特別出演者もいるらしいし”
「はい、そうです。勘がいい人は気づいたかもしれませんが、今日はなんと、私を助けてくださったユウさんに来てもらいました」
「えーと……こんにちは。自分で言うと恥ずかしいんですが、そこにいるなずかさんを助けたユウです。よろしくお願いします」
”ファッ!?”
”まさかの本人登場”
”やばっ、イケメンすぎやろ……”
「ユウさん、あの時は本当にありがとうございました」
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」
「それでも、本当にありがとうございました」
”本当にありがとな!!”
”そうそう、ユウさんがいなかったら今頃なずちゃんはこの世にいなかったかもしれないんだから”
”流石に中層フェンリルは予想外すぎたからな”
「それでは、ユウさんにも来ていただいたことですし、今日は質問コーナーを開きましょうか」
”お?”
”ユウさんが色々答えてくれるのか?”
”それは楽しみだな”
「それではまず、私から質問をしたいと思います。いいですか?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、ユウさんはどのようなスキルを持っているんですか?」
「えーと、詳しくは言えないんですが、武器を出せるスキルですね」
「その武器は、身体能力を上げるなどの効果はあるんですか?」
「いえ、ないです」
”おぅ……”
”あの速さがまさか純粋な身体能力だったなんて……”
”人の限界を突破している……”
「なるほど……ありがとうございます。
それでは次の質問ですね。これからは配信のアンケートで募集した質問をしていきます」
「はい」
「まず、レベルはなんですか、という質問なんですけど、答えられますか?」
「少し誤魔化して良いならいけます」
「それで良いです。ちなみに参考程度に言うと、私のレベルは323です」
”これは気になるな”
”というかなずちゃんそんなレベル高かったんだ……”
Aランクくらいなら行けるんじゃない?
「俺のレベルは、かるく5000は超えてます」
”ファッ!?”
”5000!?”
”今の最高レベルって公開されてる範囲だと4000くらいじゃなかったっけ!?”
”しかもかるくだろ!?どうなってんだよ!?”
「あははは……、私もすごいとは思ってましたがここまでとは………」
”ほら!なずちゃんも呆然としてる!”
”まぁ、普通そうなるよな”
”何事もないように言うこいつがおかしい”
「ふぅ、それでは次の質問に行きましょう」
”あw切り替えたww”
”何事もなかったかのように”
”また後でいじったろ”
「次の質問は……、えーと、ゆうさんに彼女はいますか、らしいんですが、答えられますか?」
「答えなきゃダメですか?俺の心が抉られるんですが」
「えっと、どう言う意味ですか?」
「察してくださいよ……」
”こいつ……イケメンなのに彼女いないのか……”
”なんか急に親近感湧くな”
”イケメンになればモテると思ってたワイ、現実を突きつけられて悲しむ”
「ごめんなさい……」
「気にしないでください、それより次の質問に行きましょう」
「そ、そうですね……」
「…………」
「次の質問は、なずちゃんとはどう言う関係でますか、だそうです」
”きたwww”
”絶対くると思ってたやつ”
”結局のところほんとにどう言う関係なんだろうな”
「なずかさんとは、あの事件以来10分程度しか話してない仲ですよ」
「はい、そうですね」
”あぁ〜、これはガチ恋勢安心ですね”
”ユウくんに被害が出なくなったw安心”
”それな。インターネットで怒らせてはいけないランキングしたら絶対一位になるからな、あいつら”
「それでは、次で最後の質問とさせていただきます」
”お、ついに最後か”
”早かったな”
”まぁ、今回はなずちゃんの配信というより、世界に対するユウくん紹介配信らしいからな”
”そうなんだ”
「今後、また配信に出ることはありますか、と言う質問です」
”これは気になる”
”どうなんだろうね”
”私的にはこのイケメンをいつまでも拝んでたいからまたやって欲しいんだけどな”
”私利私欲にまみれとるww”
「まぁ、またやる必要が出て来たらやります。けど、しばらくはやらないと思います」
”残念”
”まぁ、配信者ではないからな”
”今のうちにスクショしなければ……!”
「質問もひと段落しましたし、今日の配信はここまでにしたいと思います。次の配信は明々後日になると思うので、ぜひ見に来てください。それでは、さようなら」
バイバ〜イ
配信楽しみにしてるからね!
バイバ〜イ!!
〜どこかの誰かの部屋〜
「自分が敬語使ってるところ映像で見るって、こんなに気持ち悪いんだな」
と言う、男性の声が聞こえて来たとか来なかったとか。
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