第21話 【side中野静華】
中野静華はごく普通の家庭に生まれた一般人だった。普通の中学校に通い、普通の高校に通っていた。
だが、ある日父親が不倫をし、家庭は一気に崩れていった。
安定した収入はなくなり、母親がやっていたパートしか収入は無くなった。
まだ貯金が残っていたからよかったが、その貯金も高校の費用や家賃で徐々に少なくなっていった。
このままではまずいと思った静華が始めたのが、ダンジョン配信である。
もともと容姿や冒険者としての素質、配信者としての才能が優れていた静華は、『なずか』として、たちまち大人気になった。
そのおかげで金銭面で困ることは無くなった。
しかし、今日静華は死を覚悟した。
イレギュラーモンスターと出会ったのだ。
もちろん『なずか』として配信を続けていると、多少は危険な目にあったことはある。
だがそれは、頑張れば突破できるようなことだけだった。
本能的に『死』を感じるのは今回のイレギュラーが初めてだった。
しかし、静華が死ぬ事はなかった。
自分を助けてくれた男性がいたからだ。
これまでにも、静華を手助けしようとする人たちは少なからずいた。だがそれは、静華の体かお金が目的の下心丸出しな人だけだった。
だから、今回もきっとそのどちらか、あるいはもっと酷いことを要求されるものだと思っていた。
イレギュラーモンスターに殺されかけてたところを助けられたのだ、きっと凄いことを要求してくるに違いない。そう思っていた静華だったが、その男は結局何も要求しないまま去っていった。
純粋な善意で助けられたことのない静華は、そのことに対してとても驚いた。
表に出すのは失礼だと思い、押さえ込んではいたが……。
「本当に心から良い人だったんでしょうね、あの男性は」
命の危機から救ってもらい、しかもこれまでの人とは違う純粋な善意で助けてくれた男性。
静華はあれから一週間ほど経った今でも、その男性のことが気になって仕方がなかった。
「あれから毎日ギルドに来てはいますが、全然来ませんね、あの人」
現に、静華はあれから1日も欠かさずにギルドに来ている。
あの男性にもう一度会い、きちんとお礼をするために。
あの時は相手に合わせて感謝だけで終わらせたが、命を助けてもらった相手に、感謝だけでは静華の気は収まらなかった。
「はぁ〜、早く来てほしいですね。そうしないとまともに授業に集中することすらできない」
最近静華は高校でもその男性のことが頭から離れなくて、授業に集中できていない。
「結局今日も来なそうですね。また明日出直してきますか」
そう言い、静華はギルドから立ち去る。
自分の中に芽生え始めている感情には気付かないまま。
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はぁ、本当にいませんね、あの人。
私はイレギュラーにあったあの日から欠かさずにギルドに来ていますが、彼はいまだに姿を表してはくれません。
もしかしたら旅行とかで来ていて、たまたまここのダンジョンに入っただけかもしれません。
その場合だと、さすがに探すのは無理ですね。
最近私はあの男性のことが頭から離れなくて困っています。
授業中でもあの男性のことを考えてしまい、最近は授業にあまり集中できていなかったりもします。
「早く来ませんかね……」
そう自然と声が出るほど、私は彼にお礼が言いたいのでしょう。
すると、その願いが通じたのかギルドの入り口の方からその男性が入って来ました。
「あれは!?」
私は驚きのあまり座っていた椅子から勢いよく立ち上がってしまいました。
「やっと、ちゃんとしたお礼ができますね」
私はやっとその思いが叶うと思い、その男性の方へと走っていきました。
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テスト期間なので短めの更新です。すみません。
来週には終わるので、それが終わったらなるべく早く更新できるようにします。
それと、新作を書いてるのでよかったらどうぞ。
↓
https://kakuyomu.jp/works/16818023212967576005
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