第20話 バズる


 はぁ〜、疲れた……。


 俺は今、とてつもない疲労感に襲われている。あの後何十匹か魔物を倒し、その素材を持ってギルドに帰ったら、なぜか行く前よりもたくさんの人に見つめられていた。

 こんなにたくさんの人に見つめられた経験などなく、とても緊張して余計な体力を使ってしまった。

 しかもその後魔物の素材を換金しに行き、目の前で素材を『空間収納インベントリ』から出したら、相手の人がまぁ騒ぐわ。「こんなスキル初めてみた」だの「お兄さんすごい人なんですね」だの、ずっと言ってくるのだ。

 別に長時間話を聞くことには慣れている。どっかの誰かさんと比べればこの程度大したことはない。

 だが、今回は人の目がたくさんあった。それによる慣れない緊張と、怒涛の言葉攻撃によって俺はとても疲れたのだ。


 まぁそんな余談は置いておいて、だ。

 その後の帰り道でも俺はたくさんの人に見つめられた。これまでも少し見つめられる程度のことはあったが、ここまでたくさんの人に見られるのは初めてである。

 必然的に今日何かしたのかな?とは思ったが、今日したことといえばダンジョンに潜ったぐらいである。

 中で1人女の子を助けたが、それが原因とは思えない。彼女が言いふらしたとしても、頑張ってギルドの中の人たちに伝えられるくらいなはずだ。


 こう考えてみると、本当になんでこんなに見られてるんだ?

 まぁ、考えても仕方ないか。どうせ分からんし。帰ったら華恋にでも何か知らないか聞いてみよ。


 そう思い俺は、このことを考えるのをやめた。

 この原因があの女の子にあるとは微塵も思わずに……。



  ——————————————————


「ただいま〜」


 家についた俺は、自分の帰宅を家族に知らせるための言葉を発する。


「あ!おかえりお兄ちゃん!」

「ただいま華恋」

「お兄ちゃん大変なことになってるね!」

「何か知ってるのか?」

「え?自覚ないの?」

「あぁ、そうなんだ。なぜかダンジョンから出たら色んな人に見られて困ってるんだ」

「ほんとにわかんないの?」

「全く、なんでここまで注目されるか見当もつかない」

「あ!そっか、お兄ちゃんスマホ持ってないんだっけ?」

「うん」

「なるほど、ちょっと待ってて!」


 そう言うと華恋は走って行ってしまった。

 そして、すぐに戻ってきたとか思うと、その手にはスマホが握られていた。


「ほらこれ見て!」


 そう言って見せてきたものには、


”有名配信者なずか、ダンジョンでイレギュラーに遭遇!?”

”なずかを助けた謎の男とは!?”

”イレギュラーすら瞬殺する謎の男現る!?”


など、全部似たような記事が書いてあった。


「これがどうしたんだ?」

「もう!まだ分かんないの!?この謎の男がお兄ちゃんってことだよ!!」

「え?」

「お兄ちゃん今日ダンジョンで女の子のこと助けたでしょ?」

「あぁ、助けた」

「それが、この記事にも書いてあるなずかちゃんとことだよ」

「え……?つまり俺は知らないうちに有名配信者を助けていて、しかもその配信に俺が映っていたからこんなに注目されてるわけ?」

「そう言うことだよ」


 マジか……。

 まさかあの子が配信者だったなんて……。

 後ろになんか浮いてんな〜とは思ったが、まさか配信をしてたとは思いもしなかった。


「いまや、Zのトレンド上位はイレギュラーとなずかちゃんとお兄ちゃんのことで総取りだよ?」

「マジかよ……」


 Zとは、誰でも文章を投稿できる大人気アプリである。そこには人気のものをまとめる機能があり、そこの上位を総取りするくらい注目度が高いと言うわけである。


「そりゃあ、まじまじと見られるよなぁ……」


 ここまで話題になっている人物の1人なのだ、逆に見るなと言ういる方が酷だろう。


「でもねお兄ちゃん、正直に言うと私はそんなことはどうでもいいんだ」

「?」

「私はね、なんでお兄ちゃんがダンジョンに行くことを言ってくれなかったのかの方が大切なんだ」

「それはだな、え〜と……」

「一緒に行きたかったのに!」


 そう言って華恋はそっぽを向いてしまった。

 困ったな……。こうなると華恋の機嫌を直すにはしかなくなるのだが、もうあの頃から5年も経ってるのだ。まだあの方法が通じるかはわからない。

 まぁ、やらないよりかはマシか。

 

 そう思い、俺は華恋の頭に手を伸ばし——


「ッッッ!?」


——そのまま撫でた。


「ごめんな華恋、今度からはちゃんと言うようにするよ」

「……………」


 流石にダメだったか?まぁ5年も前の話だからな、華恋も大人になったってことだろう。

 

 そう思い、俺は華恋の頭から手を離した。


「あっ……」

「ごめんな?流石に嫌だったよな」


 冷静に考えれば5年前に嬉しかったことを今されても、嬉しいかと言われれば微妙である。それをやってしまったのだ。もしかしたらもっと嫌われたかもしれない。


「……ぉっと」

「ん?」

「もっとやってくれたら許す……」

「え?」

「だから、もっとやってくれたら許す……」

「あ、あぁ、分かった」


 どうやら華恋はまだ見た目に見合ったことが好きなようだ。


 それから俺は、華恋の気が済むまで頭を撫で続けたのだった。


  —————————————————


【感謝とお願い】


読みに来てくださった皆様、ありがとうございます!

初めて書く作品なので、誤字や脱字があるかもしれません、なので、もしあったらコメントをよろしくお願いします。あと、自分も初めて書く作品なのでもし「ここの話おかしいんじゃない?」とか、「ここもっとこうすべきじゃない?」と言うところもあったらでは教えてください!

後、最近新作を描き始めたのでよかったらこちらもどうぞ

         ↓

異世界に転生した俺は、神から授かった外れスキル『七無双』で文字どうり学園を無双する

 https://kakuyomu.jp/works/16818023212967576005


最後に、「話の続きがきになる!」などと思っていただけましたら、☆評価をお願いします!

それではまた次のお話で会いましょう!

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