第13話 俺の全力

 俺は今、ギルドマスターの部屋にいる。なぜこんなところにいるとかというと、それは数分前に遡る……。



 数分前



 試験が終わってから大体1時間が経過した。

 今はさっき受けた試験の結果が出てるはずなので、それを確認するために受付の列に並んでいる。


「次の方〜」


 ついに俺の番が来てしまった。

 大丈夫だ、試験ではそこそこいい結果を出せているはずだからな……たぶん。

 

 呼ばれた方へ行ってみれば、そこには最初に会った受付嬢と、貫禄のある男の人がいた。


「お前が、天神優真だな?」


 受付嬢さんの隣にいる男の人が、顔通りの渋い声で話しかけてきた。


「はい、そうですが……何かありましたか?」


 この男の人は明らかに偉い立場の人だ。

胸になんかすごそうなバッチもつけてるし。

 そんな人がわざわざ1試験生の俺に話しかけてきたのだ、何か重要な話があるに違いない。


「あぁそうだ。だが、ここでは話しづらいことでな、場所を移してもいいか?」

「はい、大丈夫です」


 そう答えた俺は、その男の人についていった。そして連れてこられたのが、扉にギルドマスター室と書いてある部屋だったのだ。

 

 とまぁ、こんな感じで連れてこられて、今はギルドマスターが話し出すのを待っている状況である。

 それからしばらくたち、ついにギルドマスターが喋り出した。


「天神優真、君は試験で斎藤という男を倒したな?」

「はい、確かにそう名乗った男性を倒しました」

「そいつは自分でAランクと言っていたな?」

「はい、言っていました」


 そう俺が答えた瞬間、ギルドマスターはため息を吐いた。


「はぁ……やはり勘違いではなかったか」

「あの……どうしたんですか?」

「実はな……」


 そうして俺は、普通、試験生が試験官に勝つことはないということや、その勝った相手、つまり斎藤さんが日本でも有名な強い冒険者であることを知った。


「基本、実技の試験ではその人の能力を見て、冒険者になれるポテンシャルがあれば合格として、Fランク冒険者からスタートするのだが……お前の場合は試験官に勝つほどの実力がある。そんな人材をFランクからスタートさせるのは勿体無いという意見があったのだが、お前だけ特別扱いすると絶対に何処かから不満が出る。だから、それを黙らせるために俺が推薦をしたい。そうすれば不満出なくなるだろうからな。だが、聞いた話だけで推薦を出すのはいささか問題がある。だから訓練場でお前のを見せてくれないか?」

……ですか?」

「あぁ、それで俺が推薦をするか判断をする」

「わかりました、俺のを見せます」

「あぁ、ありがとう。では、早速行くとするか」


 そう言って俺たちは訓練場へと移動した。




 —————————————————


「それじゃあ天神、あそこにある人形に全力で攻撃してくれ」


 またあの不思議な空間に来た俺は、ギルドマスターからやることを指示された。

 だが、ここで一つ気になることがある。


「あの……この訓練場って壊れたりしないんですか?」

「ん?この訓練場を壊すつもりなのか?それなら安心しろ。ここは『幻想世界ファンタジーワールド』だ。だからここの地形は壊れても現実世界にはなんら影響はない」

「そうですか……なら安心ですね」

「それじゃあ武器だが……何がほしい?」

「あぁ、武器ならいりません。僕が本気で戦う時はスキルで出てくるものを使うので」

「そうか、なら準備してくれ」

「分かりました。『スキル 神剣召喚 天叢雲剣あめのむらくも


 そう唱えた瞬間、俺の手に光が収束し刀の形を作った。だが、今回はさらにやることがある。それは——


「『状態変化 大剣』」


 ——これだ。


 天叢雲剣あめのむらくも、この刀のすごいところは二つある。

 一つ目は、絶対に壊れないところだ。普通刀は横から衝撃を与えれば簡単に折れたり、壊れたりするのだが、天叢雲剣あめのむらくもはそれがない。

 二つ目は、さっきやった通り、刀の形を変えられるところだ。だが、何にでも変えられるわけではなく、変えられる種類が決まっている。

 一つ目が『大剣』、二つ目が『大太刀』、三つ目が『長剣』、そして、四つ目が俺がよく使っている『刀』だ。

 『大剣』や『長剣』に関してはほとんど使う機会はないのだが、秘術の中にはそれを使わないとできないものもある。

 今回はその技の中の一つを使う。


 ここまででも十分だが、今回はを出せと言われているのでもう一つしておくことがある。それは——



「『身体強化』」


 ——これである。

、この魔法の効果は至ってシンプル、身体能力が2倍になる。だが、シンプルだからこそ強い。

 分かりやすく言えば百メートル走16秒のやつが、いきなり8秒で走れるようになるということだ。2倍というのはそのくらい大きいものなのだ。


「ギルドマスター、準備が整いました」

「お前……今その剣形が変わらなかったか……?いや、とりあえずこのことは置いておこう、いちいち驚いても進まないからな……」

「あの……ギルマス?」

「あ、あぁ、すまない。少し考え事をしててな。それじゃあ、気を取り直して。あの人形に全力で攻撃してくれ」

「分かりました」


 ギルマスからの許可が出たので、俺は大剣を構える。

 今回は本気なのでもちろん秘術を使うのだが、この秘術は大剣を使うこともあって、本気で使うと被害がすごいことになる。

 もしこれを使って現実世界に影響が出たら大変だったので先に確認をしたのだ。

 俺は構えた大剣を持ったまま、高く跳躍した。そして、落ちる勢いも利用して大剣をおもいっきり振り下ろした。


「天神流 秘術四の陣 惑岩翔降•滅わくがんしょうこう めつ


 ——瞬間、ものすごい轟音と共に、見える範囲全てを覆い尽くすほどの土煙が舞った。

 その土煙は優真が起こした衝撃によって生じた暴風に襲われ、荒れ狂っていた。

 そして、暴風が治り、徐々に土煙が晴れていくと、そこには半径1キロは優に超えていているであろうクレーターができていた。



  —————————————————


ギルドマスターside


「な……!!!」


 私は今、信じられない光景を目にしている。

 一人の人間が、核爆弾でも使ったかのような被害を大剣を地面に打ち付けるだけで与えたのだ。


「し、信じられない……これは私の夢か何かなのか?」


 試しに私は自分の頬をつねってみる。

 痛い……つまり、これは夢ではないということだ。

 斎藤に勝ったからすごいだろうとは思っていたが……ここまでとは思わなかった。


「ギルドマスター……僕は推薦もらえますか?」


 こいつはこれだけの力を持っているのに一切威張ろうとしない。俺に敬語を使っているのがいい例だ。

 それ自体はとてもいいことなのだが、逆に怖くもある。

 もしも天神のことを敵に回したら……と、考えるだけで恐ろしい。


「あぁ、必ず出しておこう」

「ありがとうございます!!」


 そう言って笑う優真を、絶対に敵に回さないようにしようとは私は密かに誓うのだった。



  —————————————————


 【感謝とお願い】


読みに来てくださった皆様、ありがとうございます!

皆様のおかげもあって、もうすぐ10000pvに行きそうです!

これから、もっと人気になれるように頑張っていきたいです!!

なので、「話の続きがきになる!」などと思っていただけましたら、☆評価をお願いします!

それではまた次のお話で会いましょう!











 


 


 

 




 



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