第7話 世界の現状

「んさん……、神さん……、天神さん!」

「うぉっ!」

「よく眠れましたか?」

「よく寝れはしましたが、え〜と七瀬さん?何か用事ですか?」

「えぇ、もうすぐご家族の方がお見えになります」

「あぁそのことですか、分かりました。何か僕がやることはありますか?」

「いえ天神さんはそこで待っていてください。」

「はい、分かりました」


 それだけを言って七瀬さんは去っていった。

 それにしても家族か……、みんな元気にしてるだろうか?

 あぁ、あと麗奈の様子も気になるな。なんせ10年ぶりだし、こっちだと5年だが。

 母さんたちが来たら麗奈にいつ会えるか聞いてみよう。

 心の中でやりたいことを決めていると、廊下の方からドタドタとすごい音が鳴ってきた。

 そして、扉が勢いよく開かれる。


「お兄ちゃんッッ!起きたの!?」


 まずは華恋が。そして遅れて


「優ちゃんッッ!大丈夫なの!?」

「優真ッッ!大丈夫か!?」

 

 母さんと義父さんが病室に入ってきた。

 

「みんな叫び過ぎ、ここ病院だよ?」

「ぅ…ぅ…ぅ…、お兄ちゃ〜んッッ!!!」


 俺が注意をすると、華恋が泣き出して俺に飛びついてきた。

 それを俺は受け止める。

 

「お兄ちゃん…………、もう起きないかと思ったよおおおぉぉぉ!!!」

「ごめんな華恋……、心配かけたな……もう俺は急にいなくなったりしないからな…」

「約束だよ……?」

「あぁ、約束する、だからもう泣き止んでくれないか?」

「うぅ……、お兄ちゃんがそう言うなら…」


 そして華恋は涙でくしゃくしゃになった顔を拭った。

 それにしても華恋はだいぶ変わったな。なんと言うか、全体的に大人びている。前は童顔の低身長だったが、今は童顔で平均より少し小さいかな……?くらいだ。だいぶ成長している。だが華恋はそれが気にならないくらい——


「俺が見ないうちに可愛くなったな、華恋」


 ——可愛くなっていた。

 小さい顔に大きいパッチリとした目、腰回りも細く、胸も少し大きくなっていた。

 今の華恋なら、街中を歩くだけでナンパの数がすごそうだ。


「えへへ〜、お兄ちゃんに言われると嬉しいな〜」

「そうか?それならこれから先はたくさん華恋のことを褒めないとな」


 本当にそうしないといけないと思う。なんせ、俺は5年間も会話すらできない状態だったのだから。その分を埋めるためならできる範囲でなんだってする。


「ちょっと優ちゃん!お母さんたちにも何か言うことはないの?」

「あぁ、そうだな。母さんも義父さんも久しぶり」

「久しぶり、優ちゃん……」

「久しぶりだな優真……」

「あぁ、久しぶり。義父さんに限っては6年ぶりくらいだっけ?」

「あぁ、そのくらいだな」

「じゃあ、ほんとに久しぶりだな」

「はははっ、そうだな、今度からはもう少し会いに来れるようにするよ」

「無理のない範囲でお願いね」

「あぁ、分かっている」


 義父さんは俺たち3人を養うために必死に働いてくれている。そんな人に無理はさせたくない。だが、この人なら無理をしてでも俺たちに会いに来るだろう。

 それに限ってはもう何も言わない。

 義父さんも俺たちのことを大切にしてくれている証拠だからだ。

 そんな家族との再会を楽しんでいると部屋に宮森先生が入ってきた。


「天神一家、すまないが家族団欒は後にしてくれないか?今から優真君の退院時期などについて話をするからな」

「えぇ、分かりました」


 母さんはそう言って先生の方を向いた。父さんもだ。

 だが……華恋が俺に抱きついたまま離れてくれない。


「華恋?離れてくれない?話が聞きづらいんだけど」

「やだっ!今日はずっとこのままいるもん!」

「たけど……」

「別にいいさ、久しぶりの再会だからな。話を聞いてくれるならどんな姿勢でもかまわんさ。」

「ありがとうございます……」

「なに、このくらい別にいいさ。では、気を取り直して優真君の退院時期についての話をしようか。

 単刀直入に言うと君は後一週間もあれば退院できる。」

「先生っ!それは本当ですか!?」


 思いの外早く退院できると知って俺は少し驚く。


「あぁ本当だ。検査などで異常が見られなければそのまま退院しても大丈夫だろう」

「やったッッッ!」


 俺は心の底から歓喜の声が出てきた。

 正直一ヶ月くらいはここに入院したままだと思っていた。

 だからこれは嬉しい誤算だ。


「さて、伝えたいことは伝えたし邪魔者は去るとするかな」

「先生、本当にありがとうございました!」

「これが仕事だからな」


 先生はそう言って部屋から去っていった。かっこいいな、これが仕事だからな、俺も一回ぐらい言ってみたいものだ。

 まぁそんなことはさておき、俺は目覚めてから一番疑問だったことを聞いてみた。


「なぁ母さん、なんでがあるんだ?」 


 そう、この世界にはなぜか異世界と同じ魔力があったのだ。

 



 





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