第5話 地球への帰還
ギギギ……
俺は重厚な扉を開けた。すると、その先には王座に座っている魔王がいた。
「歓迎するぞ、強く勇敢なる人間よ」
「そりゃどうも」
「本当は一人の人間など我が相手をするまでもないのだが、今回はここまできた褒美として我が相手をしてやろう」
「そうか……じゃあさっさと始めようぜ」
「あぁ、そうだなッッ!」
そう言って魔王は、音速を超える速さで俺に切り掛かってきた。それを俺は相棒、
ギンッ!
金属と金属がぶつかって鋭い音がする。その間にも魔王は斬撃を繰り返す。
それを全て防いだ俺は、剣を薙ぎ払って魔王を弾き飛ばす。
そして魔王が離れた隙に技を繰り出した。
「天神流 一の太刀
この技は名前の通り瞬間的に光のような速さで動き、相手を切り付ける技だ。
いきなり消えた俺に驚いた魔王は、自分の周りに防御結界を張る。
「ッッ!
だが、俺はその結界を破り、魔王の左腕を切り落とした。
「ぐああああぁぁ……!」
魔王は左腕が無くなった痛みで悲鳴を上げたが、それは一瞬のうちに怒りへと変わった。
「よくも、よくも我の腕を切り落としてくれたなぁぁぁッッッ!遊んでやろうと思ったがやめだ!今すぐに殺してやるぅぅぅッッッ!」
魔王は雄叫びを上げると自身の周りを黒い霧で覆った。
そして霧が晴れると、そこには化け物がいた。身長は3メートルどあり、足は丸太よりもなお太く、腕は先ほどの3倍程にまで膨れ上がり、俺が切ったはずの左腕まで再生していた。そして極め付けは、背中から3対の闇黒よりも黒い、見ているものを引き込むような禍々しい翼が生えていた。
「ふふふ、わっはっはっはっはぁぁっ!この姿になるのは何年振りだろうなぁ!。過去に一度、我に挑み撃ち倒したもの以来か。あの時の激戦は素晴らしかったな。だが、我もあの時より強くなっている。お主はいつまで耐えれるかなぁ!わーはっはっはっはぁぁっ!」
確かにさっきよりも強くなっている。さっきのステータスと比べると、全ての能力が3倍以上になっているし、レベルも5000ほど上がっている。
「この形態の我のレベルは15674だぁ!そこらへんの有象無象とは比べ物にならん!お主は、我の本気を見れる二人目の人間だ!誇りに思い、そのまま死ね!」
「そうか、それがお前の本気か。なら俺も本気を出すのが礼儀ってもんだよな」
そうして俺は『身体強化』をする。そして、天神流の秘術を使う。
天神流とは俺がこの世界で作った流派だ。だからまだできてから、10年ちょっとしか経ってない。だが、その練度は他の流派と比べ物にならないほどに洗練されている。
なぜなら、俺が敵と戦いながら改良をし続けたからだ。
その結果、完全に扱えるのは俺だけになってしまったのだが、それはいい。
そして、天神流には三つの区分がある。
一つ目が普通の技、〜の太刀。
二つ目が奥義となる、〜の型
最後の三つ目は、俺にしか扱えない秘術、
〜の陣
俺はこの三つを使い分けている。そして、秘術は魔王軍相手に使ったことはない。使わなくても勝てたのだ。まぁ今回も使わなくて勝てるが、相手に敬意を表して使ってやることにした。
「それじゃあ、この一撃で決めさせてもらおうか」
「どの口が言っておる、勝つのは我だ!以前打ち負けてから改良に改良を重ねた我の奥義を喰らうが良いッッ!くらえ!
そう唱えた瞬間、魔王に生えていた3対の翼から、深淵のような暗さを出す光が魔王の前に収束し、打ち出された。その技は触れたもの全てを侵食し、消え去る恐ろしい技だった。
だが、俺に焦りはなかった。むしろ、ワクワクしている。全力で使う自分の秘術がどの程度の威力なのか知れるからだ。
そして俺は秘術を使う。
「天神流 秘術一の陣
——刹那、周りに桜が舞う。
否、洗練された優真の動きがそう見せているだけであった。
だが、それでもその舞っているように見える桜には、見るもの全てを魅了するような美しさがあった。
そして、その桜に触れたものは全て儚く散っていった。
その光景はまるで、本当の桜が木から散っていくように見えた。
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「ふははははは、まさか我の最強奥義があのように美しい技で打ち破れるとは、お主何者だ?」
「俺か?俺は天神優真、普通の高校生だ。まぁ、いまは社会人くらいの年齢だが……」
「そうか優真か、素晴らしい技であった。あのような素晴らしい技で生涯を終えられるのならば悔いはないわ」
「それはよかった……、あぁそれなら俺からのお願いを聞いてくれないか?」
「なんだ?我はもう消えゆく身だ。できることなら限られているぞ?」
「あぁ、大丈夫だ。俺からのお願いは、次に生まれ変わったとしても、人間を襲わないでほしいということだ」
「ふっ、そのようなことか。それなら安心するが良い。我は自分の愚かさに気付かされたからな。其方のように美しいことや物を作れる人間を滅ぼそうとはもう思わん」
「そうか、それならよかった。あぁ、それと最後にお前の名前を聞いても良いか?」
「そうか、名乗っていなかったな。我の名前は『ヴォルク•グレムリンド』。しかと覚えておけよ」
「あぁ、わかったよヴォルク。お前のことは忘れない」
「ふっそうか、なら良かったわ。おっとそろそろ時間のようだ。ではまたな優真よ。また会える時を楽しみにしているぞ。」
「あぁ、またなヴォルク……」
そう言ってヴォルクは魔力となって消えていった。
それを見届けた俺は地面に横たわる。
「あぁ〜つかれた……」
久々の全力は体にきた。だが俺もこれで地球へと帰れる。
「よしっ、じゃあ帰りますか」
そういって俺は魔法陣を描く。レオンに教えてもらった地球の座標も入力して魔法陣を完成させた。
「よしっ、完成っと。いや〜それにしてもこの世界には長い間お世話になったな。」
そう考えると何か感慨深いものがある。
この世界でも色々なことをした。訓練して、訓練して、戦場に出て、戦って、戦って、魔王城に行って、敵の幹部や四天王と戦って、魔王と戦った。
あれ……?俺この世界戦ってしかなくね?いやきっとそんなことはないはずだ。
きっと、きっと…………、よし、このことを考えるのはやめておこう。きっとあったはずだ、楽しい思い出も。
「じゃあ帰りますか、元の世界に!」
そういって俺は軽い足取りで魔法陣へと足を踏み入れたのだった。
地球が今や、ダンジョンを攻略して発展する、戦いのある世界だと知らずに……。
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【感謝とお願い】
読みに来てくださった皆様、ありがとうございます!
初めて書く作品なので、誤字や脱字があるかもしれません、なので、もしあったらコメントをよろしくお願いします。あと、自分も初めて書く作品なのでもし「ここの話おかしいんじゃない?」とか、「ここもっとこうすべきじゃない?」と言うところもあったらでは教えてください!
そして、「話の続きがきになる!」などと思っていただけましたら、☆評価をお願いします!
それではまた次回で会いましょう!
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