第124話 ままをさがしに
目が覚めたら、だれもいなかったの。
お部屋の電気はついていたけれど、もう真っ暗の夜だって、ぼくはすぐに分かった。
「まま?」お返事はない。ままがいない。
ぼく、よるくまみたいにままをさがしに行かなくちゃ!
玄関には鍵がかかっていた。でもぼく、鍵開けられるよ。高いところも、台を使えば大丈夫。ぼくはじょうずに玄関の鍵をかちってやってドアを開けて、夜の闇に飛びだした。靴もじょうずに自分ではけたよ!
「まま?」
玄関を開けてすぐにままを呼ぶ。だって、すぐそこにいるかもしれないよね?
ぼくは、月明かりの中を歩く。「まま」
とてとてとて。
月の光がぼくにあたって、影ができた。
ぼく、この影ふむんだ。
えい! あ。影、行っちゃう。
じゃんぷを繰り返す。でも影は逃げちゃうんだ。
ねえ。影さん。影さんが、ままを連れて行ったの?
まま、どこにいるのかなあ? まま、どこにいるか、知らない?
あ。バス停だ。
ぼくは夜の道を渡って、バス停に行った。とてとてとて。
そうだ。バスを待とう。まま、よくここからバスに乗ってお出かけするから。
ぼくはバス停の横に座った。バス、まだかなあ。
「ボク、どうしたの?」
顔を上げたら、お兄ちゃんがいた。ぼくのお兄ちゃんじゃなくて、もっと大きなお兄ちゃん。
「ままがいないから、さがしにきたの」
「おうちはどこなの?」
「あっち」
「じゃあね、おうちでままを待つといいんじゃないかな?」
よるくまのままは見つかったんだっけ? お話忘れちゃった。ぼくは涙がひとつぶこぼれちゃったの。大きなお兄ちゃんはぼくをいいこいいこして、ぼくは大きなお兄ちゃんと手をつないでおうちに向かったんだ。とてとてとて。
大きなお兄ちゃんは、ぼくといっしょに玄関の階段に腰をかけて、いろいろお話しながらいっしょにままを待ってくれた。
すると、ちょっとしてままが向こうから来たんだ。
「すーくん⁉ どうしたの? 寝てたのに、起きちゃったの⁉ どうやって外に出たの⁉」
ままはすっごく驚いた声を出して、慌てて駆け寄って来た。ぼくもかけていく。「まま!」
ままはお兄ちゃんと手をつないでいた。ああ、お兄ちゃんを迎えに行っていたんだって分かった。
ねえ、まま。
よるくまはままを見つけられたんだっけ?
ぼくはままを見つけられたよ!
「ままをさがしに」 了
参考図書 『よるくま』酒井駒子(偕成社)
*ショートショートの連作で、10万字超の長編にいたします。
1話ごとに読み切りの形式で、次話に続きます。
毎日2回(7時、18時)更新。よろしくお願いいたします!
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