第86話 お金の稼ぎ方

 最近、あたしの成績、やばい。成績が悪いと、給料が下がる。マジやばい。クレカでもういろいろ買っちゃったんだよね。

 あたしはスタバでコーヒーを飲んでスイーツを食べながら、会社のパソコンを開いた。

 うーん、誰がいいかなあ。


 お金持ちの人、お金持ちの人。……あ、この人、お医者さん。家、どんなふうだろうなあ。ストリートビューを見る。……おっきい家! 車はっと。車、車。……うん、ベンツ二台、この人いいかもしれない。

 電話をかける。……出ないなあ。出てくれたらいいのに。

 他にはいるかなあ。

 お金持ち、お金持ちっと。……あ、この人は? えーと、地図地図っと。おお! 敷地広いっ。そしてこの区画全部、同じ苗字! きっと金持ち一族だ!

 電話電話。……出ないなあ。つまんない。

 あーあ、誰にしようかなあ。あたし、お金ないとやばいんだけど。


 あたしはすっかり飽きてしまい、私用のスマホを見て遊んだ。社用携帯に主任から「予定時間過ぎていますが、今どこですか? いつ会社に戻りますか?」とかいうLINEが来ていたけど、無視した。ほんとうにうざい、主任。あたし、ちゃんと仕事してるもん!


 あたしはYouTubeを観たり、SNSをしたりした。

 息抜きって必要よね。……コーヒーお代わりしようかな。コーヒーじゃなくて、キャラメルマキアートみたいな、甘いのにしようかな。

 あたしはレジに並んだ。スマホを見ながら。

 レジのお姉さんに注文を終えたところで、ちょっと気になるTwitterを見つけた。あたしはキャラメルマキアートが出来るのを待ちながら、それを見る。


 お得な情報を提供するだけで、一万円!


 あたしはさっきのお医者さんと金持ち一族のことを思い浮かべた。あれ、お得な情報だよね?

 あたしはキャラメルマキアートを手にすると、スマホを見ながら席に戻った。

 DMを送る。すぐに返信が来る。あたしはお医者さんの情報を送る。

 キャラメルマキアートを飲んでしばらくすると、Paypayにお金が送金されているのが分かった。すごい! たったこれだけで、一万円!

 DMに「有用な情報ありがとうございました。さらなる情報提供をお願いいたします」とあったので、あたしは金持ち一族の情報を送った。それから、お金になりそうな人の情報を探した。パソコンの中にはたくさんのお金のもとがあった。


 あたしは嬉しくなって、またいくつかピックアップして送った。

 社用携帯が鳴ったけど、無視した。

 あたし、いまお金稼いでいるんだから、邪魔しないで。ほんとうにうざい、主任。

 成績やばいけど、こうやってお金を稼げばいいんだと、あたしは分かった。

 あたし、すごいなあ。なんで今まで気づかなかったんだろう?

 あたしはパソコンの中の素敵な情報を写真に収めた。写真のが速いよね。





  「お金の稼ぎ方」 了


  *ショートショートの連作で、10万字超の長編にいたします。

   1話ごとに読み切りの形式で、次話に続きます。

   毎日2回(7時、18時)更新。よろしくお願いいたします!

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