第20話 コードネーム:雷ZERO&雷TWO

 あたしたちは雷。

 シュウジは雷ZERO、あたしは雷TWO。それはかつての呼び名、いわゆるコードネームだ。


「サリ」シュウジがあたしを呼ぶ。

 あたしたちは組織から逃げた。施設を大破させて。

「何? シュウジ。追手?」

「うん、あそこ見て」

「……ほんとだ」

 そこには、知った顔がいた。あれは雷THIRTEEN。随分若い雷だ。


 あたしたちは実験動物だ。生物学的な親はいるが、ほんとうの意味での親はいない。育ててくれたのはカプセルと施設の職員だ。あたしたちは違法に入手された精子と卵子を人工授精させて作られた、戸籍のない人間。超人的な力を宿すように実験を重ねられて作られた、生物兵器。雷シリーズ。

 施設を雷撃でぶっ飛ばして逃げ出して以来、あたしとシュウジは常に追手から逃げていた。


 雷THIRTEENと目が合う。

 十歳ほど若いその雷の彼は、にやりと笑うと手のひらをあたしたちに向け、雷撃を放ってきた! いきなり。こんな人が多い街中で!

 あたしとシュウジは雷撃をかわし、ビルとビルの間に入った。辺りには悲鳴が響く。スマホで撮影をする人々も現れ、あたしたちは帽子とマスクで顔を隠した。雷THIRTEENは姿を隠そうともせず、あたしたちを追いかけてきた。


 あたしたちは雷の力を使い、ビルを上って逃げる。雷撃を避けながら。

 辺りは騒然としていて、サイレンの音も響いてきた。目立たないように生きてきたのに、台無しだ。なるべく、人気のない方へゆく。雷THIRTEENは執拗に追ってくる。

 何度目かの雷撃がかすって、あたしの帽子とマスクを飛ばした。長い髪が帽子からこぼれて、風になびいた。

「サリ!」

 あたしは伸ばされたシュウジの手を取る。

「だいじょうぶ?」

「うん、かすっただけ」

 あたしはシュウジと抱き合う。ただ、二人でいたいだけなのに。


 あたしたちはどこかのビルの屋上にいた。

 そこに雷THIRTEENが来て、嗤った。

「いい加減、観念したら? オジサン、オバサン」

 雷THIRTEENはあたしたちに手のひらを見せた。――雷撃だ。来る。

「最後に聞くよ? 組織に戻ってくる? 戻ってくるなら、殺さないでいてあげるんだけど?」

「戻らないわ!」


 あたしはシュウジと意識を合わせ、雷の気を重ね合わせて、身体中から雷光を放っていた。雷THIRTEENの雷撃を、あたしとシュウジの雷光が吸収し、そしてそのまま、雷THIRTEENに雷撃を放った‼ 雷THIRTEENは倒れ、ビルから落ちて行った。


「死んだ?」

「分からない。生きているかもしれない」

「そうしたら、また現れるかもね」

「明日にでも会えるよ。あいつら、せっかちだから」

 明日、また会えたら。

 今度は必ず殺す!

 あたしはシュウジの頭に手をやり、そのまま顔を近づけ、キスをした。

「シュウジ、あいしてる」

「僕も」


 負けない。ぜったいに。





  「コードネーム:雷ZERO&雷TWO」 了


  *ショートショートの連作で、10万字超の長編にいたします。

   1話ごとに読み切りの形式で、次話に続きます。

   毎日2回(7時、18時)更新。よろしくお願いいたします!

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