文化祭二日前「双子の星」⑪

 ふわりと。

 ぷかりと。

 私は夢の中で浮いていた。

 落ちているのか、昇っているのか、留まっているのか、漂っているのか、流されているのか、それもわからなかった。

 私には昔から夢を夢と認識してしまうことがよくあって、今の状態も夢の中だとすぐにわかった。

 こんなこと現実には起こるはずがないからだ。

 だからといって夢の世界を自由にできるというものではない、というのが悩ましいところだった。

 夢だとわかっていても、それを操作できない、身を任せるだけ。

 唯一私に残されているのは、そのスイッチを切って、夢の世界を強制終了することだけだった。

 だけど、そういえば最近はそういう夢が少なくなってきたな、と自己分析をしていた。

 それはどうしてだろう。

 現実が安定してきたのか。

 私が安定してきたのか。

 二つに違いはあるのだろうか。

 同じことだろうか。

 さて、どうしよう、どうなるのだろう。

 上下も左右もない。

 青空のどこかのように感じるけれど、透き通っているだけで見晴らしがよいともいえない。

 何もない世界だ。

 何もすることがない、必要もない世界だ。

 だから、私は考えざるを得ない。

 現実のことについて。

 現実で起こっていることについて。

 思考は現実の世界よりもクリアになっている気がしていた。

 文化祭の準備、おおむね良好。

 手紙の宛先、いまだ行方知らず。

 手がかりなし。

 差出人だと認めている水樹君ものれんに腕押し。

 シロはこれまでにないほど非常に非協力的。

 リンゴさんも煮え切らない感じ。

 私だけ除け者にされているのでは。

 そもそも煮え切らないのは誰?

 紫桐さんからの告白、および挑戦状。

 受けるべき?

 受ける必要はない?

 そもそも私はどうしたいの?

 どう思っているの?

 浮かぶ体で、私は考える。

 ああ、そうだ、明日、クラスの雰囲気が戻っているといいな。

 前の日まであのピリピリとしたものが残るのは、きっと誰も望んでいないに違いない。

 文化祭は文化祭で楽しみたいはずだ。

 前はこんなことまで気が回っていたかな。

 そんな周りの気持ちを考える自分へと変化があった気がした。

 いつもはブレーカーを落とす感覚で強制終了するのだけれど、今はその必要はなかった。

 暖かいノイズに抱かれて、静かに浮遊していく。

 そうして私はまた深い眠りの中へ転がり落ちていった。

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