第二話 自称未来少女
目の前の自称未来少女は、冷めた目でこちらを見ている。
隣のスバルは状況を読み込めていないのか全く動かず、ただ脳内で情報処理だけを行なっているような感じである。
彼女が発したのは二つの言葉だった。未来人であるのと、神様を見つけること。意味は理解できる。いや、できないがここでは理解したということにしておこう。
「そういうのには興味ないので」
僕は口角を無理やり上げて、回れ右をしようとする。しかし、残念ながら後ろに向くことはできなかった。
「あと一週間で、この世界は崩壊する。全員死ぬ」
「は?何いってんだよ、あんた」
彼女はさっきまでの空間を眺めている目ではなく、僕のことをじっとみている。どうやら本気でそう考えているらしい。それかとても演技が上手いのか。
確かに考えてみれば、こんなに美人なんだ、もしかしたらドッキリや、演技の練習ということもある。ならば乗ってあげることも一つ善行というものなのか。
高校生なのだ、非現実的なものとはそろそろお別れしなければならないのはわかっている、しかし、純粋な男の子がまだ残ってしまっている。
仕方がない、話だけでも聞いてみよう、そう思っていると隣のスバルがやっと口をひらく。
「あんた、名前は?」
彼女は少し戸惑いながら答える。多分今まで話し返されることがないまま、逃げられていたのだろう。レスポンスがあることの嬉しさは家で一人の僕が痛いほどわかる。
「ハルカ、苗字は...わからない。ここに来たときにほとんどの記憶がないわ」
「なら記憶喪失なんじゃないのか?テレビで見たことあるけど、ショックとかで記憶が錯乱してしまうみたいな」
鋭い指摘が飛んでいく。記憶が錯乱してしまっているなら、少しかわいそうな少女だ。空想と現実が交錯してしまうのは仕方ない、時間が経てば解決するのか、僕は医者ではないからわからないが、暑い夏にずっとここに立ってこんな話をしているのは危険だ。
「とりあえず、話だけでも聞いてみよう、スバル」
なんでこんなことを言ったのかあまりわからない。きっと普段の僕だったら無視をしていたはずなのに。きっと、夏休みの退屈な日常のせいだろう。
スバルは本気かよという目で僕をみるが、仕方なく頷く。
「あなたたち本気なの?こんな変な話信じるなんて、かなり馬鹿なのか、厨二病なのかしら」
「本気なわけねーだろ!暇だからお前の話を聞くだけだよ!!」
スバルは語尾を強めてハルカに向かって叫ぶ。せっかく話を聞いてあげようとしていたのに、考えれば考えるほど、話を聞く必要性が失われていく。
「お前ってやめてくれないかしら。私、名前言ったわよね」
「へいへい、失礼致しやした、ハルカちゃん」
「"ちゃん"じゃなくて、"ハルカ様"でしょ、スバルちゃん」
「お前、未来から来たのが本当なら俺らよりもガキだよな、先輩には敬語使えや」
「あら、ごめんなさい、おじさんは年寄り扱いされるのが嫌だと思っていましたわ。大丈夫?こんな暑い中フラフラで歩いて。熱中症にならない?それとも認知症かしら」
「記憶のねえお前が認知症なんだろうが!」
だめだ、このままじゃ話が進まない。スバルとハルカの相性はいいのか悪いのかわからないけど、本当に熱中症になってしまう。まだ言い争っている二人に向かって声を上げる。
「と、とりあえず!どこか話せるところに移動しよう。こんなところで喧嘩しててもしょうがないよ」
僕たち三人は公園を後にし、喫茶店に移動することにした。
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