12-3「ハリボテの傀儡(うつわ)」(6P)





 奴らは言うのだ。

 煌びやかな衣装を身に纏いながらも

 どぶ攫いの乞食のように




 『盟主様』

 『盟主様』

 『盟主様』


 『オリオン様』

 『オリオン様』

 『エルヴィス様』



 繰り返す。

 繰り返す。

 繰り返す。



「────ハッ!」





 やかましい呪言こえに嗤いが吹き出して仕方ない。



 ああ、おかしい。

 馬鹿馬鹿しい。




(…………何が盟主だ。

 お前らが無様にも縋り纏わりついているのは、ハリボテの傀儡うつわだということがわからないのか? 『オリオン』でなければ、『盟主の息子』でなければ、ゴミを見る目を向けるのだろう?)



 ああ、空しい。

 何も見えちゃいない。





 どれだけ勤勉に励み成果を出しても、ついて回るのは『オリオン』だ。

 どれだけ抜本的な改革を提示してみても、二言目には『オリオン』だ。




 『盟主の家に生まれたから』

 『あそこの家の人だから』

 『国のトップだから』



 『だから』

 『だから』


 『だから』が 自身を否定する。





 『個人おまえには価値はない』と否応なしに叩きつけてくる。





(…………”立場を失えばゴミ扱い”。

 ────いや、立場があった分、落ちぶれた時は嘲笑の的か)

 


 

 落ちていく。




 奈落の闇はどこまでも、不安定な心に流れ込み



 落ちていく。






(……そもそも、俺に盟主の資格などありはしない。

 シェリルも、マイクも、ヘレンも。俺に関わりさえしなければ、命を奪われることは無かった)




 


 懺悔と

 罪の意識と

 自己否定が混ざり合う





 亡くなってしまった者へ

 出来ることなど何もなく


 

 日々 日々

 葛藤は募っていく





(責務なのはわかっている。

 逃げも隠れもしない。運命は背負う。

 しかし、たった三人だ。たった三人すら守れない俺に、盟主など……っ!)





 ────『たすけて、くれるの?』


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