12-3「ハリボテの傀儡(うつわ)」(4P)



 

 言葉が口を突いて出る。

 散らすように吐き出すが、焦燥も不安もどんどん噴出してくる。





 心に余裕?

 大丈夫だという楽観?

 どこをどうしたらそれが出る?

 


 

 振り向き見せつけられた『表情』が 鮮烈に蘇り

 どうしようもなく心をえぐり、溜まらなく不安でどうしようもない。


 夢は夢だとわかっていながら、心のざわつきを抑えられない。




 そんな彼に追い打ちをかけるように

 脳内の悪夢まぼろしは笑いかけるのだ。





 『オニーサン、ワタシのことだって』




 『たすけてくれなかったでしょう?』

(────”助けてくれなかった”って、なんだよ……!)




 響く声に息ができない。



 ────あの顔が、声が無性にざわつかせる。

 本当なら今すぐにでも安否を確認しにいきたい。





 もどかしさを宿した瞳が薄闇の向こうに時刻をとらえた。その数字に息をつく。『深夜1時だなんて、さすがにこの時間に外を出歩くのは、男の身でも憚られる』と、脳が素早く常識を並べたてる。



 ビスティーは開いていないし、ミリアも眠っている頃だろう。夢を真に受けて走ったところで、無駄足になることは請け合いだ。


 

 それは、わかってはいるのだが。





「────っ……!」



 どうしようもなく、不安だ。

 『安否を確認できない』状況が、思考を、嫌な方、嫌な方へと導いていく。





 『もしかしたら』

 『今まさに?』

 『ビスティーが燃えているかもしれない』

 『けれど、だとしても彼女の住まいは』

 

 『いや、しかし』




 渦巻く思考に、頭を抑えて

 エルヴィスは静かにベッドを降りると、

 救いを求めるように窓の外を覗き込んでいた。




 いくら覗き込んでも、屋敷からビスティーや彼女の家が見えるわけではないのだが



 それでも、燃えているのならば

 異変が起こっているのならば

 

 街のざわめきも、光も煙も見えるはずだと、推測をして。






 ────しかし。

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